ようごしゅう用語集
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よく検索される用語
ABVD 療法107
悪性リンパ腫のうち、ホジキンリンパ腫に対して行われる代表的な化学療法。ドキソルビシン(アドリアマイシン:A)、ブレオマイシン(B)、ビンブラスチン(V)、ダカルバジン(D)を組み合わせて行う治療法。ほとんどの場合、外来で実施可能である。
ADA145
ADA はプリン体の分解と再利用に関連する酵素であり、体内に広く分布する酵素である。結核性胸膜炎では胸水においてTリンパ球由来のADAが上昇することが知られている。ただし、膿胸や悪性腫瘍でも胸水中のADAが高値を示すことがあり、注意が必要である。ほかに結核性髄膜炎でも髄液中のADAが上昇するので診断の補助として利用されている。
Alb(アルブミン)108
血液中には、何百種類ものタンパク質が存在しており(総タンパク)、栄養源として、あるいは生体防御機構や代謝活性などの生命活動を担っている。総タンパクの中で、アルブミンが占める割合は約6割と最も多く、3.7〜5.5 g/dlほどである。アルブミンは肝臓で合成され、浸透圧の維持や微量物質の運搬を担っており、栄養状態の指標となる。アルブミンの低下は、肝疾患、重症肝障害によるアルブミン合成障害のほか、腎機能低下により尿中へ消失されるネフローゼ症候群や飢餓状態(栄養摂取不足)の指標となる。
ASK(anti-streptokinase antibody) 抗ストレプトキナーゼ抗体176
A群、C群、G群のβ溶血性連鎖球菌(溶連菌)が産生する酵素に対する抗体。溶連菌感染による、リウマチ熱、糸球体腎炎、猩紅熱などの溶連菌症の診断に利用する。感染後1〜2週で上昇し始め、その後3〜4週で最高値に達し、6〜8週間で感染前の値に戻る。ASK検査は、溶連菌の血清診断だけでなく、糸球体腎炎やリウマチ熱のように上気道から溶連菌を分離できなくなった二次後遺症の診断にも有効である。
ASO(anti-streptolysin O antibody): 抗ストレプトリジン O 抗体176
A群、C群、G群のβ溶血性連鎖球菌(溶連菌) が産生する毒素に対する抗体。溶連菌感染による、リウマチ熱、糸球体腎炎、猩紅熱などの溶連菌症で上昇する。A群β溶血性連鎖球菌は、菌体外毒素としてストレプトリジンOを産生する。C群、G群の一部の菌でも、ストレプトリジンOの産生が見られる。溶血性連鎖球菌症(溶連菌症)では、扁桃腺炎が主要な症状として現れるが、これ以外にも猩紅熱や急性糸球体腎炎などの症状も呈する。これらの症状が見られた場合、ASOを測定することで溶連菌感染と診断する。
ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale):成人期の注意欠陥多動性障 害自己記入式症状チェックリスト291
成人である対象者に対して、注意欠陥・多動性障害 (以下ADHD) の素養を確認するための問診票で、対象者自身が記入するアンケート形式となっている。成人期の注意欠陥多動性 障害 (ADHD:Adult Attention-Deficit/ Hyperactivity Disorder)は、症状をストレスと勘違いされることが多く、自身でADHDを自覚することが少ないことが知られている。ASRS は、このADHDの判断の一助であり、18 項目から構成されるアンケート式の問診票。アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアルに記載されているADHDの診断に基づいた、症状の頻度を重視した評価である。
ASV 装置(Adaptive Servo Ventilation): 陽圧喚気療法117
マスク式人工呼吸器(NPPV:Non-invasive Positive Pressure Ventilation) の一つ。ASV装置は、慢性心不全に伴うチェーンストーク呼吸(無呼吸と喚気を繰り返す呼吸)に対する NPPVとして開発された。心不全の重症化に伴って肺においてもうっ血が起こることで呼吸困難が引き起こされ、特に就寝時に横になることでチェーンストーク呼吸、発作性夜間呼吸困難を起こす。これらの症状に対して薬物治療で十分な効果が得られない場合に、NPPVを用いた呼吸補助療法が検討される。ASVは、呼吸状態と気流の変化に合わせて補助換気圧を同調させるため、正常に近い滑らかな呼吸が得られる特徴があり、病院内のみならず自宅でも使用することができる特徴を持つNPPVである。
EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid):エチレンジアミン四酢酸233
キレート剤の一つ。医薬品や食品の、金属による酸化を防止するために添加する。硬水の軟化にも利用される。金属イオンの一部は、医薬品、食品、ゴム製品などと反応して酸化させるので、これらの酸化防止を目的としても EDTAは汎用されている。採血管内に抗凝固剤としても添加されているが、EDTAによる凝集が生じて血小板値が低下する、偽性血小板減少症の原因になる場合がある。
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing): 眼 球 運 動 に よ る脱感作と再処理法283
適応的情報処理モデルに基づいた、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などトラウマ関連傷害に対する、1989年にFrancine Shapiroによって考案された心理療法。PTSDだけでなく、うつ病、パニック障害や強迫性障害などでも利用される。8段階、3分岐の過程によって、現在の状態を良化し、自己評価や身体的苦痛から解放され、予測されるトラウマの引き金を解消する。
FAB 分類(French-American-British)102
急性白血病の病型分類の一つ。1976年にフランス、アメリカ、イギリスの血液専門家からなるグループによって提唱された。その後、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病(類縁疾患含む)についても提唱し、2001年にWHO分類が提唱されるまで国際的な標準分類として広く用いられてきた。
FISH(Fluorescence in situ hybridization)104
標的遺伝子の検出法の一つ。検出したい標的遺伝子に相補結合する合成遺伝子をプローブ
(probe)と呼び、遺伝子が相補結合して複合体を形成することをハイブリダイゼーション(hybridization)と呼ぶ。FISHでは、蛍光あるいは酵素で標識したプローブを、標的遺伝子と結合させて検出する。また、FISHは遺伝子をサンプルから抽出して検出するのではなく、細胞・遺伝子が本来あるべき場所(in situ)でハイブリダイゼ—ションさせ、蛍光顕微鏡下で検鏡する手法である。細菌学や分子遺伝学での利用が多いが、医学分野でも染色体数の異常や染色体転座の検出などに活用される。
HER2(human epidermal growth factor recpter2):ヒト上皮細胞増殖 因子受容体 296
正常細胞にもわずかながらに存在し、細胞分化や増殖に関与すると考えられているタンパク質。HER2が過剰に発現されたり、活性化したりすることで細胞の増殖制御ができなくなり、がん化すると考えられている。乳がん、胃がん、卵巣がんでHER2の遺伝子発現が高い。かつてHER2陽性乳がんは難治性乳がんとされていたが、トラスツブマブ(ハーセプチン)などの治療薬が開発されて以降、治療成績が大幅に改善された。
HLA(Human Leukocyte Antigen): ヒト白血球抗原102
自分自身の目印となる固有のタンパク質である。免疫細胞である樹状細胞が抗原を貪食した際に、T細胞に情報提示する主要組織適合性複合体(MHC:major histocompatibility complex)のことを指す。生体移植の際、ドナー(患者)とレシピエント(提供者)とでHLA 型が大きく異なると、免疫細胞が異物として認識し、移植した臓器・細胞に対して、移植を受けた人のT細胞が作用して拒絶反応が起こる。
HTLV-1(Human T-cell Leukemia Virus Type 1):ヒト T 細胞白血病ウ イルス106
感染後40〜60年後に、約5%の保菌者でHTLV-1感染細胞が腫瘍化して成人T細胞性白血病(ATL)を引き起こす。このほか、HTLV-1感染脊髄症、HTLV-1ぶどう膜炎などの疾患の原因となる。中央アフリカ、カリブ海沿岸、パプアニューギニア周辺地域に分布が偏っており、日本では九州南部、沖縄を中心に分布していたが、近年都市部での増加が見られる。日常生活で感染することは無く、HTLV-1が同定される前は授乳母乳感染がほとんどだった。最近では妊婦ではHTLV-1感染の有無を調べるため、母乳感染は劇的に減少した。一方で、性交渉や、輸血などでもHTLV-1が感染したT細胞が直接体内に入ることで感染する。
HUS(hemolytic uremic syndrome): 溶血性尿毒症症候群258
赤血球が壊され、後天性溶血性貧血、急性腎不全、血小板減少の3兆候を特徴とする症候群。腸管出血性大腸菌O157感染などで、感染症状に続発する重症症状。HUSは、続発性以外にも特発性、遺伝性の場合があるが、多くが感染症や疾患からの続発によって起こる。腸管出血性大腸菌感染では感染者の数%〜10%で発症する。このほか、アデノウイルス、ロタウイルス、赤痢菌、エルシニア菌、薬剤ではシクロスポリン、マイトマイシンCなど、また、悪性腫瘍、糸球体腎炎などでもHUSの報告がある。
ICS(吸入ステロイド薬)139
喘息の治療にはステロイドの内服治療が有効だが、副作用が多いために吸入で使用するように改良された薬である。吸入によって治療効果は高く、ステロイドの副作用は少ないという薬がICSである。ICSによる治療が普及してから、喘息は治療可能な病気となって、喘息死は大きく減少した。現在はβ2刺激薬や抗コリン薬との合剤の吸入薬が開発されていて、吸入治療がしやすいように改良されている。
IgE 抗体138
IgE 抗体は免疫グロブリンというタンパク質の1種で、抗原となるアレルギー物質と結合してヒスタミンを肥満細胞から放出させてアレルギー症状を引き起こす。喘息やアレルギー性鼻炎などの人では血液検査で IgE 抗体が高値を示す。ほかに寄生虫症でも高値を示す。
IGRA141
結核に感染しているかどうかを検査する方法としてはツベルクリン反応があるが、BCG を接種した人では偽陽性となることがある。そこで、血液中のTh1リンパ球を結核菌特異物質で刺激してインターフェロンγを測定することで結核に感染しているかどうかを判定する IGRA が開発された。現在結核に感染している人のほか、過去に結核に感染した人でも陽性になるので注意が必要である。現在IGRA としてQFTとT-SPOTが使用されている。
LABA(long-acting β-agonists): 長時間作用性β2 刺激薬138
気管支喘息や COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に用いる、気道を広げる吸入薬の一つ。気管支は、自律神経の働きで収縮/弛緩する。気管支の交感神経β2受容体を刺激すると、気管支平滑筋が弛緩して気道が広がる。効果が長時間続くため、発作時に用いるのではなく、毎日定期的に投薬を続けることで発作の予防する薬である。
LAMA(long-acting muscarinic antagonist):長時間作用性抗コリン薬138
COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療の第1選択薬。気管支の収縮を抑えて、気道を広げる薬である。副交感神経は主にアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質で働いているので、このアセチルコリンの働きを抑える(抗コリン作用)薬を投与することで、気道が狭くなるのを防ぐ。毎日定期的に投薬を続けることで発作の予防をする薬である。
LOI(Leyton Obsessional Inventory): レイトン強迫性検査282
強迫症状と強迫性格傾向を測定する、自己評価質問紙。Cooper, J.が1970年に出版した原著で、英国を中心に強迫症状や強迫性格傾向の測定に広く用いられている。日本版は、北里大学東病院グループによって作成されている。設問は69項目で構成されており、このうち 38 項目で「ハイ」と回答した場合のみ追加質問が設定されている。強迫神経症だけでなく、強迫症状を伴う摂食障害、統合失調症、うつ病、器質性精神障害などで利用される。
MALT リンパ腫(Mucosa associated lymphoid tissue)106
悪性リンパ腫の一つ。粘膜に関連するリンパ組織で、免疫細胞である B 細胞が腫瘍化する非ホジキンリンパ腫(リンパ腫の約10%を占めるホジキンリンパ腫以外のリンパ腫)。発症年齢の中央値は 60 歳代で、悪性リンパ腫の中でも最も発生頻度が低く、年単位でゆっくりと進行する。MALT とは粘膜とリンパ球の複合組織のことで、MALTを有する組織の半分は消化管で、大部分が胃に集中している。胃MALTリンパ腫では、高頻度でピロリ菌感染が見られ、ピロリ菌の除菌で治癒が得られる。
MCV 値(平均赤血球容積)226
赤血球の平均的な大きさ。貧血を来す疾患の指標である赤血球恒数の一つ。ヘマトクリット値(%)÷ 赤血球数(106/μL)×10で求められる。貧血で、MCV低値は鉄欠乏性貧血などの小球性貧血、MCV高値は巨赤芽球性貧血などの大球性貧血と鑑別診断に用いられる。赤血球恒数には MCVのほかに、MCH(平均赤血球血色素量)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)がある。
Mini-Mental State Examination (MMSE):精神状態短時間検査295
アメリカのFolstein夫妻が1975年に考案した、認知症のスクリーニングテスト。世界的に汎用されており、長谷川式知能評価スケールと並んで利用される。11 項目からなる質問で構成された認知機能、認知症の評価法。所要時間が10〜15分と比較的短いため、認知症の診察時にスクリーニングとして用いられる。日本では2018年に保険適用となり、改訂長谷川式簡易知能評価スケールとともに、臨床で使用されている。
RA 系(レニン – アンギオテンシン系)176
タンパク質分解酵素の一種で、腎臓の糸球体で作られる。レニンの働きで作られたアンギオテンシンⅡのよって、血圧が上昇する。腎臓のかん流圧低下や交感神経の興奮によって、糸球体からレニンが分泌される。レニンはアンギオテンシノーゲンに作用して、アンギオテンシンⅠというホルモンを遊離させる。これに血管内皮細胞のアンギオテンシン変換酵素が働くことで、強力な血管収縮や血圧上昇などの作用を持つアンギオテンシンⅡが作られる。血液循環量の増加、血圧上昇によってレニン分泌は抑制される。このレニン−アンジオテンシン系によって、血液の循環調節機構が形成されている。
RT-PCR(Reverse Transcription – Polymerase Chain Reaction)104
PCR 法は部分的に DNA を増幅する手法であるが、RNAを直接増殖させることはできない。そこで、逆転写酵素を用いて、RNAからDNAに逆転写、相補鎖形成させ、形成された相補的 DNA(cDNA:complementary DNA)をPCR法に利用することで、RNAの検出を行う手法である。
SABA(short-acting β -agonists):短時間作用性β2刺激薬138
SABA は交感神経β2受容体を刺激し、速やかに気管支を拡張する薬である。効果は数時間と短いため、主に喘息発作を和らげ呼吸を楽にする。
SNRI(Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitor): セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬283
うつ病やうつ状態の治療薬。情報伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの再取込みを阻害することで脳内濃度を高め、これらの情報伝達をスムーズにする。シナプス前細胞から放出された神経伝達物質は、シナプス後細胞で受け取られるが、一部の受け止めきれなかった情報伝達物質はシナプス前細胞が回収(再取り込み)する。SNRIは、この再取り込みを阻害する薬である。うつ病などではセロトニンやノルアドレナリンの情報伝達がスムーズにいかなくなっているので、再取り込みを抑制することで脳内の量を維持し、情報伝達をスムーズにする。
SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography):単一光子放射断層撮影296
放射性医薬品を用いて、その放射線の移動や分布を測定し、コンピューターで画像を再構成して断層画像とする検査法。脳血流シンチグラフィなどがある。放射性同位元素で標識された薬剤を投与し、放出される放射線を測定して薬その薬剤の分布を調べる検査を、シンチグラフィ(scintigraphy)と呼ぶ。このシンチグラフィで、身体・部位の断層撮影がSPECT である。平面での撮影と比べて、薬剤の局在がより詳しく分かる。脳血流シンチグラフィは、脳血流のわずかな変化を見つけるための検査で、脳梗塞や認知症などの診断に利用される。
SST(Social Skills Training):社会技能訓練293
社会生活を送るために必要な技能を身に付けるための訓練。認知行動療法に基づく精神科リハビリテーションの一つ。障害を持つ人が社会で直面する困難を軽減し、社会生活で必要となるスキル(技能)を身に付けるための訓練法の一つ。挨拶や会話技術など、対人関係や日常生活を円滑にすることを目的としている。認知行動療法に基づいたリハビリテーション技法で、リカバリー(自分らしく、納得のいく人生を送れる)の考え方を重視している。そのため、SSTは障害を持つ人だけでなく全ての人に適応可能で、企業や学校などでもメンタルヘルスの向上に役立っている。
Stanford 分類122
大動脈解離の臨床的病型分類の一つで、解離範囲のみで分類する方法。大動脈は高い血圧に耐えるために内膜、中膜、外膜の3層構造となっている。何らかの理由で大動脈の内側の内膜、真ん中の中膜が弱くなると、中膜と外膜の間(中膜層)に大動脈血が勢いよく流れ込んで末梢方向(手足の先端方向)へ向かって大動脈の壁を縦に裂き、大動脈解離を生じる。大動脈解離は、心臓を出てすぐの上行大動脈から裂ける場合と、背中の下行大動脈など上行大動脈以外の動脈から裂ける場合とがあり、Stanford分類では前者をA型、後者をB型と大別する。
Vidian 神経242
脳から涙および鼻汁の分泌神経へと繋がる神経で、日本語では翼突 (よくとつ)神経と呼ぶ。Vidian 神経は、鼻腔に分布する副交感神経を含んでおり、切除することで鼻汁の分泌が減少する。現在は、1998年に黄川田らが提案した、Vidian神経の末梢枝を切断する後鼻神経切断術が広く行われている。
Walter Reed262
黄熱病が蚊によって媒介されることを証明した、アメリカの軍医。ウイルスの存在が明らかとなる50年以上前の1900年前後、キューバを占有していたスペインとアメリカが戦争をしていた。当時のキューバでは黄熱病が猛威を振るっており、Walter Reedは黄熱研究委員長として、病原体を見つけるべくキューバに赴任する。しかし、患者血液から細菌などの病原体は検出されず、人から人への感染は否定される。Walter Reedは蚊の媒介を疑い、人体実験によって黄熱病は蚊が媒介することを証明した。
X 線透過性187
X線が物質を通過する度合いのこと。X線写真で黒くなる領域ほど透過性が高い。各臓器を構成する成分の違いにより、X線の透過度も異なる。X線写真では、透過度が高いと黒く、低いと白く見える。このコントラストによって、X線写真は正常構造、病変が見分けられる。透過度が高い組織は、肺、消化管などに含まれる空気や脂肪で、これらは黒く見える。中程度の組織は、胸水、尿などに含まれる水や筋肉、脳などの軟部組織である。透過度の低い組織は、胆石や結石のような石灰化した組織や骨である。
アカントアメーバ256
土壌に生息する原虫の一種。コンタクトレンズの誤用などによって、重度の角膜炎を引き起こす。かつては土壌や淡水域に普通に存在する原生動物だったが、コンタクトレンズが発明されたことで、単細胞の寄生虫である原虫に含まれた。アカントとは棘(とげ)を意味している。コンタクトレンズのいい加減、だらしない使い方、水道水で洗浄するなどの間違ったレンズケアによって、角膜とコンタクトレンズの間にアカントアメーバが入り込み、角膜を傷つけることで角膜炎を引き起こす。アカントアメーバ角膜炎は、コンタクトレンズ合併症の中でも最も病状が重くなる感染症である。
アジスロマイシン258
細菌のタンパク質合成を阻害するマクロライド系抗生物質。アジスロマイシンは、細菌がタンパク質を合成できないように働く抗生物質である。深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、尿道炎、子宮頸管炎、副鼻腔炎、歯周組織炎などに適用される。
アスピリン129
アスピリンは解熱鎮痛作用と血小板の凝集を抑制する抗血小板薬としての作用がある。現在は脳梗塞や心筋梗塞の予防薬として広く使用されている。副作用の一つとしてアスピリン喘息があり、鼻ポリープのある慢性副鼻腔炎の人に多く起こる。アスピリン喘息は、アスピリンだけでなく多くの非ステロイド系抗炎症薬でも発症し、重症の喘息になることが知られているので注意が必要である。
アセトアミノフェン135
体温調節中枢は視床下部にあり、アセトアミノフェンは体温調節中枢に作用して血管を拡張させ汗腺を広げることで放熱作用によって体温を下げる働きがある。また、アセトアミノフェンには体温調節中枢に対して体温を上げるように作用するプロスタグランジンの合成を阻害する作用があり、この効果でも解熱作用がある。さらにアセトアミノフェンには疼痛緩和作用があるが、抗炎症作用は弱いという特徴がある。
圧痕性浮腫 (pitting edema)179
浮腫の性質による分類で、圧迫後に圧痕が残る浮腫を指す。浮腫(ふしゅ、edema)とは、吸収・循環される限界(生理的代償範囲)を越えた水分が貯留した状態。圧痕性浮腫は、腕や足の細胞と細胞の間の部分(間質)に水分が貯留しており、指などで10秒程度圧迫した後に40秒たっても圧痕が残る浮腫のこと。圧痕性浮腫は、ネフローゼ症候群、肝硬変、心不全で見られる浮腫である。
アポトーシス(apoptosis)103
多細胞生物では、内的刺激あるいは外的刺激によって、日常的に細胞死が起こる。細胞死にはさまざまなタイプがあるが、大別して制御された(プログラム)細胞死(PCD: programmed cell deathまたはRCD:regulated cell death)と、事故的細胞死(ACD:accidental cell death)とがある。アポトーシスはさまざまな物理、化学、生物学的因子を介して誘発され、厳密に調整された細胞応答によって制御されている。
アメリカ疾病管理予防センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)256
国内外におけるアメリカの人々の健康と安全を守る連邦機関アメリカ国内に限らず他国に駐留するアメリカ人も含めて、アメリカ国民に健康と安全を守るための連邦機関である。連邦あるいは各州における健康に関する決定に際して、さまざまなエビデンス(科学的根拠)の提供を行う。
α1-アンチトリプシン欠乏症139
好中球エラスターゼによる組織破壊から肺を守っているのがα1-アンチトリプシンだが、その先天的欠乏がα1-アンチトリプシン欠乏症である。遺伝性疾患でアジアでは少なく白人に多い病気である。この病気では肺は破壊されて肺気腫になるほか、異常なタンパクが肝臓に蓄積して肝硬変を生じることがある。
α-ガラクトシダーゼ199
糖脂質を加水分解する酵素の一つ。遺伝的にα-ガラクトシダーゼが欠損していると、ファブリー病(スフィンゴ糖脂質代謝異常症)となる。脳血管障害、心障害、腎障害などの組織傷害を引き起こす。
アルブミン尿189
血漿中に多く存在するアルブミンタンパク質が、尿中に漏出している状態。腎疾患のマーカー。アルブミンは、血漿(血球以外の血液成分)中に最も多く存在するタンパク質で、血液中に水分を保持して正常な循環を促す働きをしている。血液は腎臓の糸球体で濾過され、老廃物などの不要な物質は尿として排泄されるが、腎臓の機能が正常であれば血液循環に必要なアルブミンが排泄されることはない。そのため、アルブミン尿は腎障害の指標となる。
イマチニブ104
染色体転座(フィラデルフィア染色体)によって生じたBCR-ABL融合遺伝子の産物である、BCR-ABLタンパク質を標的とした、代表的な分子標的治療薬(チロシンキナーゼインヒビター阻害薬)。慢性骨髄性白血病およびフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に適用される。
イムノクロマト法257
発色色素で標識した抗体を使って、検体中の抗原(病原体、ホルモンなど)を検出する検査技術。簡易の妊娠検査などに用いられている。セルロースなどの膜に血液・尿などの検体を滴化すると、検体中の抗原が反応し、抗原抗体複合体を形成する。検体中に抗原が存在する場合のみ色素の線が出現する。
インスリン165
血糖値を下げる唯一のホルモンで、体内では膵臓のβ細胞で作られる。食事などによって
血糖が上昇すると分泌が促進され、血糖を下げ、血糖値を正常に維持する。糖尿病患者では分泌の低下またはうまく作用しないこと(インスリン抵抗性)により、作用が不十分になり、血糖が上昇する。高度にインスリンが欠乏した高血糖状態では、注射で補給して血糖値を下げる治療が必要になる。
ウェクスラー成人知能検査(WAIS: Wechsler Adult Intelligence Scale)274
16歳以上に適用される知能(IQ)検査。知識、見当識、記憶、計算などの項目で、脳の機能全般を評価する手法である。1955年に出されたウェクスラー成人知能検査改訂版で、2019年に第4版(WAIS-Ⅳ)が出版された。優れた知能検査だが、検査時間が約2時間かかるため、高齢者や高次脳機能傷害の方などでは検査が困難な場合がある。
易感染性101
感染症に罹患しやすい状態を指す。糖尿病、低栄養、腎不全、肝硬変などの基礎疾患を持つ患者や、免疫抑制剤・抗がん剤投与、放射線治療を受けた患者などでは、感染防御機構である免疫に障害が起こりやすいため、健康な状態では感染が成立しない常在細菌や平素無害菌による感染症が起こるリスクが高くなる。
エストロゲン(卵胞ホルモン)95
女性ホルモンの一つで、乳房の発達など、女性ならではの体の仕組みや形態をコントロールしている。エストロゲンの分泌は30歳前にピークに達し次第に低下し、40歳代に入ると著しく低下して閉経を迎える。エストロゲンの分泌が減ると、乳管上皮細胞でエストロゲン受容体が増える。エストロゲン受容体に結合したエストロゲンは細胞分化・増殖を促すため、何らかの発がん刺激により傷ついた細胞に作用して乳がんを生じると考えられている。
オスラー結節196
感染性心内膜炎患者に見られる特徴的所見。手足の指の先に盛り上がってできる赤い斑点で、中心部は青白く痛みを伴う。この痛みは腫れに先行して表れ、数日で褐色斑となって消える。黄色ブドウ球菌などを原因菌とした菌血症に起因する皮疹だが、感染性心内膜炎の約15%の症例で見られる特徴的所見で、診断の一助となる。
オニオンスキン病変189
脾臓の中心動脈周囲で、繊維化が同心円状に起こる病変。脾臓の中を通る中心動脈で炎症
が起こると、血管の外側の壁が厚くなり、血液が通る内側が押しつぶされる。この血液の通り道が押しつぶされた際の血管の断面が、玉ねぎを輪切りにした時の断面のように見えることから、オニオンスキンと呼ばれる。自己免疫疾患である膠原病(こうげんびょう)の一つである、全身性エリテマトーデスに特有の病変。
原発臓器・原発巣81・89
がんが発生した臓器を原発臓器、その臓器における局在を原発巣と呼ぶが、ほぼ同義的な意味である。血行性・リンパ行性に転移した際に、原発巣に対してその部位を転移巣という。各がんの特性で転移しやすい臓器があり、例えば大腸癌では肝臓や肺、乳癌では脳、骨や肺に転移頻度が高い。転移巣の組織学的性質は原発巣に準じたものとなる。まれに原発巣が判明せずに、転移臓器やリンパ節のみ画像検査で確認されることがある。その際は、原発不明がんとして扱われる。
Ca(カルシウム)拮抗薬113
血圧降下薬の一つで、高血圧の治療に用いる。カルシウムは生体の骨格形成を司る重要な原子。しかし、カルシウムは骨や歯にのみ存在するわけではない。カルシウムは生体内のさまざまな組織に微量に存在し、筋肉を収縮させる働きがある。Ca拮抗薬は、血管平滑筋に対して働くカルシウムの働きを阻害することで、血管平滑筋の収縮を緩和して血管を広げ、血圧を降下させる。また、心臓の血管である冠動脈に作用することで、心臓の血液量を増やし、狭心症発作を予防する働きもある。
GABA(gamma-aminobutylic acid): γ – アミノ酪酸279
アミノ酸であるグルタミン酸が脱炭酸されて生成する。さまざまな生理作用が知られているが、特に哺乳動物では中枢神経系に抑制性の伝達物質として働くことが広く知られている。古くからイモなどの植物に含まれるアミノ酸として知られていたが、その後の研究でGABAが脳内、中枢神経系で抑制的に働く神経伝達物質であることが分かってきた。しかし、GABAは血液脳関門を通過しないため、食品などで体外から摂取しても、直接的に神経伝達物質として作用することはない。
Ki6796
細胞の核に存在するタンパク質であり、増殖している細胞で発現しているため、Ki67は細胞増殖のマーカーとなる。乳がん、悪性リンパ腫、脳腫瘍、神経内分泌腫瘍などの診断や予後予測に用いられている。乳がんでは、エストロゲン受容体陽性でHER2陰性のがんにおいて、投薬薬剤の適応マーカーとして利用される。Ki67の高値は悪性度が高く再発しやすいことを示すが、標準測定法が無く、個々に判断基準が異なるため注意を要す。
QFT(QuantiFERON)141
結核菌に感染しているかどうかを、末梢血を用いて調べる検査法。採取した末梢血に結核菌の一部分(結核菌特異抗原)を混ぜて培養する。結核に感染していると、血液中の免疫細胞がこの結核菌の一部分に素早く反応し、情報伝達物質としてインターフェロン-γ(INF-γ)を放出するので、このINF-γをELISA法によって測定することで、結核感染の有無を判定する。日本では結核対策として、弱毒化した牛型結核菌を用いたBCG(Bacillus Calmette-Guerin)ワクチンによる予防接種 が定期接種の対象となっている。
咳嗽82
咳(せき)嗽(うがい)と書いて「がいそう」と読む。いわゆる「咳」のこと。気道に入ってきた病原体、ほこりや煙などの異物を、気道外に排出することで、肺や気道を守る反射
(咳反射)であり、生体防御機構(自然免疫)の一つ。異物が気道に入ると、気道表面の咳受容体から脳の咳中枢に刺激が伝わり、呼吸筋(肋間筋や横隔膜など)に指令が出て咳が出る。また、気道粘膜の繊毛運動とともに、気道から喀痰を排出する働きがある。
拡散強調画像(DWI:diffusion weighted image)129
MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)の撮影条件の一つ。MRIは、放射性物質を用いることなく、強い磁気と電磁波を利用して身体を断面的に画像化する装置。DWIは、水の水素分子のブラウン運動によるわずかな拡散を画像化する手法で、運動の大きなものは黒く、運動の小さなものは白く見える。身体を構成する細胞などは常に活発に活動しているので、正常であれば黒い画像となるが、脳梗塞のように動きが少なくなった部位は白い画像となる。白く見える病気の代表は新しい脳梗塞と炎症(脳腫瘍)などである。
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT: activatedpartial thromboplastin time)236
血管内で働く内因系の凝固因子の異常を見つけるためのスクリーニング検査。血友病やフォン・ヴィレブランド病などの診断に用いる。血液凝固因子の多くは肝蔵で作られるため、肝機能障害によって血液凝固因子が減少した場合も、APTTは延長する。
確定診断82
自覚症状、身体所見、各種の検査結果に基づいて下した最終診断。
下鼻甲介239
鼻の内部には3段のひだがあり、一番下のひだを下鼻甲介と呼ぶ。アレルギー性鼻炎では、下鼻甲介の前端で最も強くアレルギー反応が起こる。鼻の中には、呼吸の際に入ってくる埃や病原体を防ぐために、粘膜に覆われたひだがバリアの役目をしている。下鼻甲介は一番下にあるひだで、吸い込んだ空気が最初にぶつかる。花粉やハウスダストなどアレルギーの原因となるアレルゲンが呼気とともに下鼻甲介にぶつかることで、粘膜が浮腫んで鼻が詰まったり、鼻汁を出したりするアレルギー反応が起こる。
ガリウムシンチグラフィ182
ガリウム67という放射性物質を静脈内に注射して行う核医学検査である。このガリウム67という物質は、腫瘍や全身の炎症がある部分に集積するという特徴がある。ガリウム67を注射し、その2〜3日後にガンマカメラという特殊なカメラで撮影を行い、病変の部位を確認する。腎臓領域では、急性間質性腎炎で強い取り込みが見られる。
がん80
正常細胞は、誕生から分裂、増殖、アポトーシス(プログラム死)を辿り、一定の秩序の下でこれらが繰り返して新陳代謝がなされている。生体内外からの影響など、何らかの原因で細胞内の遺伝子に変異が起こると、秩序を乱し、分裂を繰り返して、アポトーシスを起こさない細胞が出現し、この無限に増殖する不死の細胞は日々発生するが、通常は生体防御機構が働いて排除される。しかし、排除がうまくいかないと、元の臓器を離れても増殖し続ける「がん」になる。がんには、がん(ガン)、癌、悪性腫瘍、悪性新生物などの呼び名があり、世間一般的には同じものとして扱われている。がんの定義は上皮細胞に由来する悪性腫瘍のみを指し、間葉系由来の悪性腫瘍、例えば肉腫とは区別される。病理学では形態的特徴に基づき、癌、肉腫、血液系の悪性腫瘍の悪性リンパ腫、白血病など明確に区別して用いられる。なお疫学・統計学では多岐にわたる疾患を扱うことが多いために、悪性新生物という用語を用いて、悪性腫瘍を包括し他の疾患との区別している。
寛解導入療法102
急性白血病では、全身の骨髄や血管内に白血病細胞が広がるため外科的手術や放射線治療の適応にはならない。一方で、固形がんと比較して、抗がん剤治療(化学療法)の有効性が高い。そこで、初回治療として、骨髄中の白血病細胞が5%以下となる完全寛解状態を目指した強力な抗がん剤治療が行われ、これを寛解導入療法と呼ぶ。治療後に白血病細胞とともに正常な血液細胞も減少し、造血能が正常に回復するまで1カ月程度かかる。また、完全寛解状態としても、体内にはまだ多くの白血病細胞が残っており、寛解導入療法に続けて寛解後療法(地固め療法)を行うことで、白血病細胞の根絶を目指す。
桿菌136
細菌の形状の一つで、棒状あるいは円筒状をしている細菌。原核生物である細菌は、その形状から球菌、桿菌、らせん菌に慣用的に分類されることがある。この形を維持するために細菌は細胞壁を持っている。細菌の細胞壁は、構成成分のペプチドグリカンが厚いタイプ(グラム陽性菌)と薄いタイプ(グラム陰性菌)に大別される。グラム陰性桿菌は、大腸菌のような常在細菌がいる一方で、病原細菌として数多くの感染症の原因となる細菌が知られている。
感作 T リンパ球238
生体防御機構(免疫)を担うT細胞(Tリンパ球)において、異物である抗原と一度接触することで感作し、抗原の情報を記憶した細胞。二度目以降に同じ異物が侵入した際に素早く働く。胸腺で作られるT細胞は、獲得免疫の司令塔を担う白血球である。感作とは、一度経験した抗原の再度の刺激に反応しやすい状態で、つまりは一度目の抗原刺激によって抗原の情報を記憶していることを意味する。この記憶しているT細胞を、メモリーTあるいは感作Tリンパ球と呼ぶ。感作Tリンパ球は、ワクチンのように感染予防や重症化予防に働くが、一方でアレルギーにも関与する。
眼前暗黒感119
目まいのタイプの一つで、目の前が真っ暗になる目まい。眼前暗黒感は失神系の目まいともいわれ、原因の多くが血圧の変動による。起立性低血圧(いわゆる立ちくらみ)も眼前暗黒感の一つ。目まいには眼前暗黒感のほかに、自分自身や周囲が回転していると感じる回転性目まいや、身体がフワフワと浮いているような感じがする浮動性目まいなどがある。
鑑別診断124
症状を引き起こしている原因を正確に見極めるための診断を指す。鑑別とは、見分けることを意味する。病気の診断をする際に、症状を引き起こしている疾患を絞り込んだり、症状を引き起こす原因が他の要因によらないことを確認したりして、症状の原因を正確に特定する診断法。
起炎菌136
炎症を引き起こす原因の細菌。細菌感染によって炎症が起きることがあり、治療にあたってその炎症の原因となっている細菌を特定する(同定)必要がある。しかし、人間の身体には 100兆個以上の細菌が常在しており、また、感染・炎症には関与しないものの身体に付着している細菌(汚染菌)や真菌もいるため、感染症診断・治療において起炎菌の鑑別が重要となる。
期外収縮118
心臓が本来予定されたタイミングよりも早く収縮する不整脈。
キャピリアMAC抗体(キャピリアⓇMAC抗体ELISA)141
末梢血血清を用いた、非結核性抗酸菌症(MAC)の検査法の一つ。非結核性抗酸菌の細胞壁は糖脂質(GPL:Glycopeptidolipid)を有しており、これによって非結核性抗酸菌は 28 種類の血清型に分けられている。これらの血清型に共通する構造として、GPL-coreがある(結核菌および M.kansasii を除く)。このGPL-coreを抗原として、血清中のIgA抗体を測定する。非結核性抗酸菌に感染していれば、免疫応答によって非結核性抗酸菌に特異的な抗体が作成されるので、MAC患者ではGPL-coreに対するIgA抗体の値が高くなる。
急性期129
病気になり始めの時期。さらに症状が急に現れたごく初期の時期を超急性期と呼ぶこともある。
胸腔持続ドレナージ145
胸腔内の空気や胸水などを、吸引器を使って持続的に排出すること。正常な胸腔内には、微量の胸水はあるものの、空気は存在していない。しかし、種々の疾患や開胸術後、胸腔内に空気、体液・血液が浸潤、貯留することがある。これらは肺が膨らむのを邪魔するため、十分な換気ができず、呼吸機能低下を引き起こす。また、胸腔内は陰圧であるため、胸腔ドレーンを胸腔に留置し、持続陰圧吸引装置に接続して、持続的に排出させる。
虚脱亜型(collapsing variant:虚脱型亜型)178
巣状分節性糸球体硬化症(FSGS:focal segmental glomerulosclerosis) の、組織分類の一つ。巣状分節性糸球体硬化症の病理学的分類として、国際的にColumbia分類が採用されている。Columbia分類は、病理的特徴、治療や治療反応、予後などを基に、非特異型亜型、門部周囲型亜型、細胞型亜型、糸球体尖型亜型、虚脱型亜型の5つに分類されている。分節状あるいは球状に虚脱し、足細胞の肥大と増殖を伴っている糸球体が少なくとも1つある場合、虚脱型亜型に分類される。
グルカゴン165
血糖値を上げるインスリン拮抗ホルモンの一つで、体内では膵臓のα細胞で作られる。肝臓でグリコーゲンとして蓄えられたブドウ糖を血液中に放出するよう作用して、血糖値を上昇させる。患者家族が行える重症の低血糖の緊急時の治療法として、注射やパウダーの経鼻投与製剤がある。
クレアチニン200
筋肉内のクレアチンが筋肉を動かすエネルギーとして使用された後にできる代謝産物(いわるゆ老廃物)である。クレアチニンは腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるため、腎臓機能の指標となり、腎臓機能が悪くなると高値となる。ただし、筋肉量が多い人は少ない人に比べて高値となるため、本来の腎臓機能に比して悪く評価される場合があり注意が必要である。
クロナリティ106
2個体の生殖により生まれる子孫ではなく、1個体から分裂、複製により増殖した子孫の集団をクローンと呼ぶ。生命体あるいは生物の構成要素の集団・集合体が、いくつのクローンで構成されているのかを示すのがクロナリティである。すなわちクロナリティとは、その複製集団の起源となる個体の数・量を示している。1個のクローンに由来する均一の複製集団をモノクローナル、少数のクローンに由来する複製集団をオリゴクローナル、多数のクローンに由来する複製集団をポリクローナルと呼ぶ。
経皮的心肺補助装置(PCPS:Percutaneous Cardio Pulmonary Support)114
機械によって心臓と肺の両方の働きを助ける、補助循環法の一つ。遠心ポンプと膜型人工肺によって心臓と肺の両方を補助する人工心肺装置。右心房へ静脈カニューレ(脱血管)を挿入し、遠心ポンプによって静脈血を膜型人工肺へ送り、酸素を混合した血液を動脈カニューレ(送血管)から大腿動脈へ送血することで、生命維持に必要な循環とガス交換を行う装置。重症心不全や重症呼吸不全などに、数日から数週間程度の一時的補助装置として用いられる。
ケースフォーミュレーション(現象学的定型化)274
心理士が行う問診。患者からさまざまな情報を得て、その後の治療方針を決める手法の一つ。個々の事例に特化させた治療を行うべく、面接、評価で得た情報を基にその事例を理解して、さまざまな臨床心理学の理論を用いながら、介入計画を立てるために行われる。
血液培養136
血液中の細菌の存在を確認するための培養法。患者から採取した血液を培地に混ぜ、35℃で数日間培養する。血液は常に無菌状態を保っているが、何らかの理由で血液中に微生物が侵入することがあり、この状態を菌血症と呼ぶ。菌血症になると、血液を介して微生物が全身を巡り、全身感染を引き起こす。また、菌血症は免疫が過剰に働くことによる敗血症の原因にもなる。血液培養は原因菌の特定に有効な検査法の一つである。
血清抗体価98
病原体に感染すると、免疫応答によって抗体が産生され、血清中にも発現する。この抗体の発現量によって感染の有無を判定する手法である。しかし、血清抗体価に正常値という概念が無いため、抗体価の高低で近い過去あるいは現在感染していることは判断できない。ウイルス感染などでは、急性期(発病早期)と回復期(発病2〜3週間後)のペアで抗体価を測定し、回復期に4倍以上上昇した場合にウイルス感染を推定する。
血清補体価(CH50)176
急性糸球体腎炎や膜性糸球体腎炎などの、補体異常の認められる疾患のスクリーニングおよび経過観察のための検査。補体は、血清中に存在していて、病原体に感染した際に活性化され、炎症反応や抗体とともに免疫反応に関与している。補体は、C1〜C9までの成分、インヒビター、制御因子など20種類のタンパク質から構成されている。血清補体価(CH50)検査では、C1〜C9までの全ての補体成分の活性を一括して測定する全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎のほか、肝炎や肝硬変でも値が低くなる。
ケトン体207
脂肪の分解によって肝臓で作られ、血中に放出されるアセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸の総称。エネルギー源として利用しているブドウ糖の供給が減少すると、血糖値を維持するために肝臓に蓄えられているグリコーゲンが利用されるが、これが枯渇すると筋肉や脂肪細胞に蓄えられている脂肪、脂肪酸がエネルギー源となる。脂肪酸は肝蔵でケトン体を作り、肝臓以外の臓器でエネルギー源として利用される。体内でのケトン体産生が増加し、多量のケトン体の蓄積によって身体のpHが酸性に傾くと、ケトアシドーシスと呼ばれる。
ケミカルメディエーター239
細胞間の情報伝達に使われる。化学伝達物質。細胞間の情報伝達は、生理活性を持つ化学伝達物質が担っており、これらをケミカルメディエーターと呼ぶ。抗原抗体反応や炎症反応が起こると、ヒスタミン、セロトニン、ペプチド、ロイコトリエン、トロンボキサンなどのケミカルメディエーターが決まった細胞から放出され、それぞれに作用を発揮して、痛みやアレルギー症状を呈す。
ケルクリング(ケルクリング皺襞、輪状襞、ケルクリング弁)161
小腸の内側を構成する輪状のひだ。腸管内部では、粘膜全体が蛇腹のように折り畳まれて、多数のひだを形成している。腸閉塞が疑われる患者などで消化管のX線を撮影した時に、
大腸では輪状のヒダが太く(ハウストラ)、小腸では細かい輪状のヒダが見え、これによって大腸と小腸を鑑別できる。17世紀オランダの解剖学者Theodor Kerckringにちなんで、ケルクリングの名が付いている。
見当識障害132
脳障害による認知症の症状の一つ。時間や季節、自分がいる場所、話している相手などが分からなくなる障害。見当識とは、自分が置かれている状況を正しく認識できる能力のこと。今日は何月何日で、季節がいつなのか、今の時間、朝昼晩の認識や、自分が誰とどこにいて何をしているのかなどいろいろな見当識がある。脳梗塞や脳出血などの脳損傷を起こす病気で見られることがあり、一部の認知症では初期の段階から見られる。
抗CCP抗体192
関節リウマチで特異的に認められる抗体。抗CCP 抗体測定法の検出感度は70%程度だが、抗CCP抗体陽性者の約90%が関節リウマチと、特異度の高い検査である。しかし、膠原病、慢性肝疾患、慢性感染症だけでなく健常者でも抗CCP抗体が認められる場合がある。
抗 RNA ポリメラーゼⅢ抗体192
抗核抗体の一つ。細胞の核内酵素であるRNAポリメラーゼⅢに対する抗体で、強皮症および強皮症腎で認められる。
抗核抗体191
細胞の核の成分と反応する抗体の総称。ヒトを含む真核生物の核内にさまざまな物質が存在している。この核内物質を抗原とした抗体が抗核抗体であり、現在までに50種類以上の存在が分かっている。
抗血小板薬113
血栓の生成を予防する薬で、狭心症、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、脳梗塞などに適用される。血管内で血液の流れが速いと、血小板が活性化して血栓を生じる。また、動脈硬化などによって血管が傷ついた場合にも血栓が生じる。抗血小板薬は、シクロオキシゲナーゼ‐1(COX-1) 阻害によってトロンボキサンA2の合成を阻害することで血小板凝集を抑制し、結果として血液の凝固による血管の閉塞を防ぐ。
抗好中球細胞質抗体(ANCA: antineutrophil cytoplasmic antibody)181
腎臓や肺を主とした小型血管炎を示す症例で見られる、好中球細胞質に対する自己抗体の総称。1982 年に Davies らによって巣状壊死性腎炎の患者血清から発見された、自分の好中球の細胞質と反応する自己抗体。腎臓や肺などで小型血管炎を示す症例において、高い確率で見出される。ANCAには、主にプロテナーゼ3を抗原とするC(PR-3)- ANCAと、ミエロペルオキシダーゼを抗原とするP (MPO)- ANCAに大別される。C-ANCAは多発血管炎肉芽腫症で、P-ANCA顕微鏡的多発血管炎、腎血管炎で見出されることが多くある。
抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA、P-ANCA)181
抗好中球細胞質抗体の中で、主としてミエロペルオキシダーゼに対する自己抗体。自分の好中球の細胞質と反応する自己抗体の一つで、主にミエロペルオキシダーゼに対する抗原であるが、エラスターゼやラクトフェリンも抗原として報告されている。顕微鏡的多発動脈炎、pauci-immune型壊死性半月体形成性腎炎、巣状壊死性腎炎などで高い値を示し、進行性全身性強皮症やグッドパスチャー(Goodpasture)症候群でも若干の上昇が見られる。
抗糸球体基底膜抗体 (GBM:anti- glomerular basement membrane antibody) 型180
急速進行性腎炎症候群のうち、特発性半月体形成性糸球体腎炎の一つ。急速進行性腎炎症候群は、1995 年に世界保健機構(WHO)が、「急性または潜行性に発症する血尿、蛋白尿、貧血および急速に進行する腎不全」と定義した腎炎で、急速進行性腎炎(RPGN:rapidly progressive glomerulonephritis)の臨床経過をとる腎炎の総称である。予後不良な腎炎である特発性半月体形成性糸球体腎炎もその一つで、pauci-immune型腎炎とGBM型肝炎とに大別される。GBM型腎炎は、糸球体基底膜に対する自己抗体である抗GBM抗体が関与する腎炎で、ヒト腎炎の約5%が該当する。
好中球アルカリホスファターゼ(NAP: neutrophil alkaline phosphatase)229
好中球が貪食した抗原を分解する際に用いる酵素の一つ。慢性骨髄性白血病や二次性多血症、発作性夜間血色素尿症、伝染性単核症などのウイルス感染症で低値となる。
抗トポイソメラーゼⅠ抗体192
抗核抗体の一つ。細胞の核内にある酵素・トポイソメラーゼ I に対する抗体で、全身性進行性強皮症で特異的に発現する。
抗ヒスタミン薬135
ヒスタミンはアレルギー物質によって生体内の貯蔵部位から遊離されると平滑筋の収縮によって喘息を引き起こし、また血管透過性を亢進させる結果としてじんましん、発疹、鼻炎などの症状を起こす。抗ヒスタミン薬はこのヒスタミンの作用を抑えることでアレルギー症状を緩和する。
呼吸性アルカローシス146
呼吸性アルカローシスは呼吸数が増加するなどの理由で血液中の二酸化炭素が減少して体液のpHが上昇してアルカリ性に傾いた状態である。不安による過換気症候群、高熱、敗血症、急性低酸素血症、アスピリン中毒で起こる。
骨髄標本102
白血病や再生不良性貧血などの血液の病気において、診断および治療効果判定の手法として骨髄検査がある。骨髄検査は、血球を産生する骨髄から骨髄液を採取し、骨髄標本を作成して顕微鏡で骨髄像を評価する、血液疾患の診療に重要な検査法である。
コラーゲン191
人体を構成する繊維状タンパク質の1つ。人体の皮膚、血管、じん帯、腱、軟骨などの組織を構成する繊維状のタンパク質である。体内に存在するタンパク質の約30%を占めており、そのうち40%は皮膚に存在しているが、骨、血管や内臓など全身の組織を構成している。慢性の腎臓病を発症すると、コラーゲンなどの繊維状タンパク質が過剰に蓄積して腎臓が線維化し、腎臓が分泌する赤血球造血ホルモンの産生が低下することで腎性貧血が引き起こされる。腎性貧血発症のメカニズムは十分に解明されていないが、結果として腎機能が失われ、心筋梗塞や脳梗塞などを発症しやすくなることが分かっている。
C1q191
補体の一つ。自己免疫疾患などで多量に産生される免疫複合体と結合することから、血液中の免疫複合体検出に用いられる。自己免疫疾患などで免疫複合体(IC:immune complex)が増加すると、腎臓や血管壁に沈 着して組織障害の原因となる。IC とは、抗原、抗体、補体の複合体。補体C1の亜成分であるC1qは、血液中の循環性免疫複合体(CIC: circulating immune complex)と結合することから、全身性エリテマトーデス (SLE)、糸球体腎炎、関節リウマチなどにおける、CIC検出法の一つとして利用される。
CD20 タンパク質(Cluster of Differentiation 20)107
1970 年代ごろから、細胞表面抗原に対する抗体を用いて白血球を主とした各種細胞の鑑別同定がなされ、これらを抗原ごとに抗体を区分したものがCD(Cluster of Differentiation) 分類であり、現在371種が分類されている。免疫細胞の中で、主に抗体産生を担うB細胞の表面に発現するタンパク質。B細胞発生初期から形質細胞へ最終分化する前までの発生過程で広く発現する。
CD33 タンパク質(Cluster of Differentiation 33)103
1970年代ごろから、細胞表面抗原に対する抗体を用いて白血球を主とした各種細胞の鑑別同定がなされ、これらを抗原ごとに抗体を区分したものがCD(Cluster of Differentiation) 分類であり、現在371種が分類されている。一般的にCD33はAMLなどの骨髄系の細胞で発現しALLでは発現していないが、一部にCD33陽性ALLがあり予後不良とされている。近年CD33抗原に対して開発された抗体の中から、CD33陽性AMLの治療に有効な薬剤が開発されている。
CHOP 療法107
悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)の代表的な化学療法。シクロホスファミド(C)、ドキソルビシン塩酸塩(ヒドロキシダウノマイシン:H)、ビンクリスチン硫酸塩(オンコビン:O)の3種類の抗がん剤と、副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン:P)を組み合わせて行う治療法。ほとんどの場合、通院治療が可能である。また、B細胞由来の悪性リンパ腫に対して、抗体製剤であるリツキシマブを加えたR-CHOP療法も行われる。
CRP(C-reactive protein):C 反応性 タンパク135
身体に炎症が起きている時に血液中で上昇するタンパク質。正常な血液中には極微量にしか存在しないタンパク質だが、炎症や組織破壊が起きると速やかに肝臓で産生されて血液中に放出され、正常時の数千〜数万倍の量となる。また、CRPの血中濃度は炎症の程度に比例するので、炎症や感染の指標としてだけでなく、病態の把握や治療効果判定にも利用される。Cタンパク質のCとは、このタンパク質が肺炎球菌のC多糖体(capsular polysaccharide)と反応する物質として発見されたことに由来している。
G-CSF(granulocyte-colony stimulating factor):顆粒球コロニー 形成刺激因子101
免疫細胞の情報伝達物質であるサイトカインの一種。白血球の一つである好中球などの顆粒球の分化や増殖を促進し、また、好中球の機能亢進作用、さらには好中球に対する抗アポトーシス作用などを示す。好中球減少症の治療に、G-CSF製剤が用いられている。
GIST(Gastrointestinal Stromal cell Tumor:消化管間質腫瘍、消化管間 葉系腫瘍)87
消化管の壁にできる肉腫、悪性腫瘍の一つ。消化器のがんの多くは表面の粘膜層から発生するが、GIST は粘膜の下に腫瘤状の病変を形成する。GISTの頻度は比較的まれながら、小腸では最も多い悪性腫瘍である。
JAK2 遺伝子(Janus activating kinase 2)228
赤血球の増殖に関与する遺伝子。骨髄増殖性腫瘍において、恒常活性型変異したJAK2V617F遺伝子(617 番目のアミノ酸であるバリン(V)がフェニルアラニン(F)に変換)が高頻度に検出される。特に真性多血症では、ほとんどの症例でJAK2V617Fを認める。
サーベル鞘気管(saber sheath trachea)139
COPD(慢性閉塞性肺疾患)や慢性気管支炎の患者に見られる、気管・気管支軟化症の一つ。サーベル鞘気管は、正常時半円の気管が鋭角となる様が刀の鞘のように見えることに由来している。
サイコパシー(psychopathy):精神病質289
他人に対して愛情や思いやり、恐怖などの感情の一部が欠落しており、道徳観念や倫理観に乏しく、自己中心的な振る舞いが見られる恒常的なパーソナリティ障害。他人を騙したり欺いたりし、共感を持たず、感情は希薄で、行動は衝動的、社会的ルールに従わないなどの反社会的パーソナリティ特性のこと。サイコパスは程度や現れる特性に違いがあり、必ずしも罪を犯すわけではない。男性の約3%、女性約1%が該当するとされている。
サイトカイン143
特定の細胞に情報伝達する細胞分泌性タンパク質(生理活性物質)の総称。主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、決まった細胞に向けて極微量で情報伝達する働きを持っている。多くのサイトカインが複雑に作用し合うことで、免疫系全体がコントロールされている。細胞増殖や分化、細胞死や治癒などに関連するものも見つかっている。
サザン解析106
放射性同位体や酵素などで標識した短いDNA配列(プローブ)と相補的な塩基配列を持つ DNA断片を検出する手法。分子生物学や臨床検査学などにおいて、特定・特異的なDNA 配列がサンプルDNA中に存在しているか、存在するのならば全配列中のどこに存在するのか、配列の保存性(壊れているかどうか)などを把握するための手法として、最も基礎的な手技。1975年にエドウィン・サザンが発表し、サザン・ブロッティングと呼ばれる。
酸素カヌラ(カニューレ、鼻カニュラ)149
鼻の下にあてがって、酸素を流出させるチューブ。酸素投与が必要な患者に対して圧迫感や閉塞感が無いため、装着の負担が少ない器具である。
散布影82
胸部X線や胸部CTなど画像検査所見において使用される。炎症を示唆する画像所見用語である。肺野において主病巣の周囲に複数の小型病巣が散らばったように存在する際に用いられる。肺抗酸菌感染症において確認されることが多い。
施設基準適合医療機関111
施設基準とは、医療法で定める医療機関および医師等の基準のほかに、健康保険法等の規定に基づき厚生労働大臣が定めた、安全面やサービス面等を評価する基準である。医療機関が設置されている地方自治体厚生局などに施設基準に適合する旨の届出をすることで、診療報酬が加算できる。医療機関の管理・運用を適正に行うためには、2年ごとの診療報酬改定のたびに複雑化する施設基準への対応が求められている。
シナプス276
神経伝達は、神経細胞の突起から神経伝達物質を送ることで成立する。情報伝達を行うための接触構造をシナプスと呼ぶ。
瀉血229
治療のために一定量の血液を取り除くこと。真性多血症、続発性多血症の血栓形成予防や、INF 療法および肝庇護療法抵抗性のC型慢性肝炎にのみ適用される。
周術期125
手術前から手術中、手術後までの一連の期間。
循環血漿量228
血管系を循環している血漿の量。血漿とは、血液中の血球以外の液体成分のことである。血液が身体に占める割合は体重の約 8%(12〜13分の1)で、その8%のうち5%程度が循環血漿量である。血液中のタンパク質や水分の増減(濃縮/希釈)によって血漿量は増減するが、腎蔵の機能が低下すると排尿量も低下し、結果として循環血漿量が増加することで心不全の要因となる。
硝酸薬113
ニトログリセリンや硝酸イソソルビドなど、狭心症治療薬の一つ。これらの硝酸薬は、血管平滑筋弛緩作用によって狭心症を治療する薬。硝酸は体内で代謝を受けて一酸化窒素(NO) を発生する。血管内皮細胞で生成されたNOは、平滑筋内に拡散してグアニル酸シクラーゼを活性化し、サイクリックGMPを増大させることで細胞内Caイオン濃度を減少させ、平滑筋を弛緩させて血管拡張を起こす。
心筋トロポニン124
心筋細胞を形成するタンパク質。心筋細胞は、トロポニンC(troponinC:TnC)、トロポニンI (troponin I:TnI)、トロポニンT(troponin T:TnT)の3つのユニットで形成されている。正常時、血液中の心筋トロポニン濃度は極めて微量だが、心筋細胞が損傷を受けると(心筋壊死)、TnIやTnTの血中濃度が上昇する。広域な心筋壊死の最も一般的な原因は心筋梗塞であり、血中心筋トロポニン濃度は心筋梗塞の診断補助、急性冠症候群患者の死亡リスク分類に利用される。
神経終末239
神経細胞から出ている最も長い突起を軸索または神経線維と呼ぶ。この神経線維の末端である神経終末は、他の神経細胞とシナプスを介して情報伝達を行っている。
心原性119
心臓、心臓の病気が原因となって現れる症状や疾患を意味する。例えば、心臓でできた血栓が脳へ運ばれて塞栓となって脳梗塞を引き起こした場合、心原性脳梗塞、心原性脳塞栓症と呼ばれる。また、不整脈などの心臓疾患を原因とした失神を、心原性失神と呼ぶ。急性心筋梗塞や大動脈解離などが原因となって起こる血圧の急激な低下は、心原性ショックと呼ばれる。
侵襲的治療122
身体に負担を与える治療法のこと。侵襲とは、生体を傷つけることを意味している。手術による切除や、皮膚・身体の開口部に器具を挿入するなど、身体に負担を与える治療法のことを侵襲的治療と呼ぶ。対義として、手術を必要としない非侵襲的治療(投薬治療や酸素療法など)がある。
心理アセスメント291
医療や福祉の分野では、対象者の人格、状況、環境などに関するさまざまな情報を順序立てて収集し、現状に至る要因を分析して介入方針を決定するための作業仮説を立てる過程をアセスメントと呼んでいる。心理アセスメントでは、面接法、観察法、質問紙法、知能検
査法、投影法、神経心理学的検査法、脳画像検査などの方法によって臨床的データを収集し、複数組み合わせて仮説生成を行う。
膵臓ランゲルハンス島206
膵臓の膵体と膵尾に多く見られる小さな細胞の塊で、糖代謝に関与する膵臓のホルモンが作られる。α細胞では、脂肪やグリコーゲンをブドウ糖に変えるグルカゴンが作られる。β細胞ではグルカゴンと拮抗して血糖を下げるインスリンが作られる。δ細胞では、グルカゴンやインスリンの分泌を抑制するソマトスタチンが作られており、両ホルモンの分泌を微調整している。
スクリーニング82
網や仕切りなどを意味するScreenの動詞で、ふるい分け、選別を意味する。医学においては、集団検診のような多くの被験者を対象可能とした簡易型検査法である。対象集団の中に罹患あるいは陽性が確認されると、二次検査や精密検査が推奨される。従ってスクリーニングはそれ自体で完結する検査ではなく、選別された対象者に対して精密な検査から早期診断・治療へとつなげる、予防医学の基礎である。
スピキュラ(Spicula)82
CT(Computed Tomography)やマンモグラフィ(乳房専用 X 線撮影)において、がんを示唆する画像所見用語である。原発病巣の辺縁において周囲組織を巻き込むような棘状・線状構造物の影を指す。棘状突起、羽毛立ち様の陰影などとも表現される。組織学的には周囲組織へ浸潤を示唆する所見と一致し、腺がんで認められることが多い。
すりガラス影82
胸部X線や胸部CTなど画像検査所見において使用される。GGO(ground-glass opacity)、 GGN(ground-glass nodule)といった病変の陰影所見ですりガラス影は確認することができる。肺野に薄く雲がかかった様な陰影で、肺実質の血管や気管支など既存の構造は保たれ透見される。その一方でべったりと白く充実成分として呈する部分をsolid typeやコンソリデーション:consolidationと呼ばれる。
生体アミン(神経伝達物質)276
アミノ酸から生成される化合物の総称。エピネフリン、ノルエピネフリン、ドパミン、セロトニン、ヒスタミンなど、生体内で神経伝達物質やホルモンとして重要な働きをしている。
セフェム系181
抗生剤にはペニシリン系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ミューキノロン系などがあり、セフェム系はその一種である。細菌の細胞壁合成に関わるペニシリン結合タンパク質に作用し、細菌の細胞壁合成を阻害することで、殺菌作用を示す抗生剤である。開発された時期により、第1〜第4世代まで分かれるが、各世代においても各細菌に対する効果が異なっており、適宜確認する必要がある。
染色体検査102
細胞の核には、DNAが折り畳まれた染色体が格納されている。この染色体の異常を検査する臨床検査が染色体検査である。染色体異常には、先天的な異常に関与する構成的染色体異常と、がん細胞などに現れる染色体異常がある。特に血液がんでは、疾患に特徴的な染色体異常があり、診断や治療法の選択、治療効果の判定に用いられている。
染色体転座100
人間は膨大な量のDNAを有し、このDNAが折り畳まれて23対(46本)の染色体を細胞の核内に格納している。転座とは、特定の染色体の位置が通常と異なることであり、500人に1人の割合で転座があるとされるが、発生のメカニズムは不明である。染色体転座には、一部の脱落した染色体が入れ替わった相互転座と、1本の染色体が他の染色体に付着するロバートソン転座がある。また、染色体の一部が失われたり付加したりしている不均衡転座、染色体の配列が異なるだけで過不足が無い均衡転座がある。
先天性疾患121
生まれつき持っている疾患のこと。出生児の3.0〜5.0%が、何らかの先天性疾患を持っていると報告されている。心疾患、染色体疾患、奇形症候群、先天異常症候群など、疾患・症状・重篤度はさまざま。先天性疾患の原因は、約半数が多因子遺伝とされているが、染色体異常、単一遺伝子疾患、環境因子や催奇形因子など、他の要因とも関連して引き起こされると考えられている。また、染色体の変化による先天性疾患を染色体異常と呼ぶ。染色体異常は、本来2本の染色体で形成される1対が3本で形成されるトリソミーの頻度が最も多いとされている。23 対ある人の染色体で、13番、18番、21番染色体でのトリソミーが知られており、21番のトリソミーはダウン症候群と呼ばれる。
組織形態学83
生物の最小単位は細胞であるが、多細胞生物はさまざまな形態の細胞から成り、この異なる形態の細胞が組み合わせによって、多彩な組織が各々に形成されている。組織もまた、それぞれの機能を発揮するために合理性を持っており、各々の機能に合った形態へと収束する。組織学は形態学の一つであるが、この合理性を持った組織形態を追究する学問が組織形態学あるいは形態組織学である。
組織診(針生検)96
乳房に生じたしこりや分泌物などの原因、症状を呈する細胞や組織を採取して詳しく調べる生検(生体検査)が行われる。組織を取って染色し、顕微鏡下で観察することを「組織診」と呼ぶ。乳房の組織診には、針を使う針生検と、外科的生検とがある。
Tamm Horsfall タンパク質(THP)194
尿中に最も多く排泄される糖タンパク質。尿成分である円柱の基質。ウロモジュリンとも呼ばれる。
T-SPOT(T スポットⓇ .TB)141
結核菌に感染しているかどうかを、末梢血から分離したリンパ球を用いて調べる検査法。T-SPOTでは採血後にリンパ球を分離して、その数を調整してから結核菌特異抗原を加えて刺激する。検出感度はQFTよりもT-SPOTの方が高いと報告されている。
T 細胞105
胸腺(Thymus)で分化、成熟した後に血中へ出現する細胞であることから、T細胞と呼ばれ、細胞性免疫を担う。CD分類でCD4に分類されるT細胞はヘルパーTと呼ばれ、抗原に対する特異的免疫である獲得免疫の司令塔として、貪食細胞であるマクロファージや樹状細胞から抗原提示を受け、リンホカインを介してB細胞を形質細胞に分化させる。また CD8に分類されるT細胞はキラーTと呼ばれ、ナチュラルキラー細胞として非特異的にウイルス感染細胞やがん細胞を破壊する。
大動脈内バルーンパンピング(IABP: Intra-Aortic Balloon Pumping)114
バルーン(風船)にガスを送り込むことで、心臓の働きを助ける比較的簡便な補助循環法の一つ。バルーンの付いたカテーテルを大腿動脈あるいは上腕動脈から心臓に近い胸部下行大動脈内に留置し、心臓の拍動に合わせてヘリウムガスを用いてバルーンを膨張、収縮させることで、心臓の動きを補助する。急性心筋梗塞などの重症冠動脈疾患や心不全症例において用いられる。
多価不飽和脂肪酸117
動脈硬化や血栓予防、血圧降下、LDLコレステロール減少などの効果作用を持つ、必須脂肪酸。脂肪酸は脂肪の構成要素であり、不飽和脂肪酸は主に魚や植物性脂肪に含まれる。不飽和脂肪酸には、オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸と、多価不飽和脂肪酸とがある。多価不飽和脂肪酸は n-3系のα-リノレン酸とn-6系のリノール酸とに大別される。α-リノレン酸は体内でIPA(イコサペンタエン酸)からDHA(ドコサヘキサエン酸)へと変化し、リノール酸は体内でアラキドン酸となる。α-リノレン酸、リノール酸およびアラキドン酸は体内で合成できず、多価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸であるため、食物から摂取しなければならない。
多剤併用療法141
肺結核の病巣には多数の結核菌が生存しており、その中には必ず薬剤耐性菌が存在している。そのために肺結核に対して1剤や2剤の薬剤で治療すると薬剤耐性菌が生き残って治療を失敗する。そこで多剤併用療法として3剤以上を用いて治療することで、肺結核の治療が成功する確率が高くなる。
投影性同一視(Projective identification)289
自身が受け止めきれない自身の嫌な部分や認めたくない感情を、他者に投影することで嫌な自分と向き合うことを回避する行動。境界性パーソナリティ障害者に見られる。自分と他者との区別が曖昧な境界性パーソナリティ障害者は、自分の嫌な部分を相手に投影して押し付け、自分自身は「善」のまま、相手を「悪」として嫌悪感を向け、攻撃する。責任転嫁、あるいは現代用語でいう理不尽な逆ギレで、境界性パーソナリティ障害者がよく用いる原始的防衛機制である。
同種造血幹細胞移植101
ヒトの細胞は、幹細胞から体細胞へと分化することで多様の機能を持つ。造血幹細胞は、骨髄中で血球を作るもととなる細胞である。血液がんや免疫不全症などで、化学療法や免疫抑制療法では治癒が見込めない場合、完治を目的として造血幹細胞移植を行う。造血幹細胞移植には、患者自身の幹細胞を用いる自家造血幹細胞移植と、患者以外のレシピエント(提供者)から提供された造血幹細胞を移植する同種造血幹細胞移植がある。同種造血幹細胞移植では、移植片対白血病効果(GVL効果)は期待できるものの拒絶などの免疫反応が起こるため、レシピエントとドナー(患者)との間で、白血球型(HLA)の一致度が 高いほど、条件の良い移植となる。
トラウマ(心の傷)283
予期せぬ事故や災害、いじめや家庭内暴力など、心身に対して強い衝撃を受けると、心に傷を負う場合がある。これを心的外傷(トラウマ)と呼ぶ。不安、イライラ、不眠などの症状が表れる場合もあり、時間経過とともに心をむしばむと考えられている。また、トラウマ体験が引き金となって発生するストレス障害を、心的外傷後ストレス障害(PTSD: Post Traumatic Stress Disorder)と呼ぶ。
トロンボポエチン227
血小板産生を調節する造血因子。血小板を産生する巨核球の分化・成熟や血小板形成を促進する。血小板はトロンボポエチンを吸着するので、血中の血小板数が増加するとトロンボポエチン量は減少し、反対に血小板数が減少するとトロンボポエチン量は増加する。トロンボポエチンは主に肝臓で産生されるため、肝疾患が進行すると血小板数が減少する。
内因性オピオイド244
体内で作られる痛みをコントロールする物質。中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体へ結合して、モルヒネに類似した作用を示す物質を、オピオイドと呼んでいる。内因性オピオイドは、エンドルフィン、エンケファリンなどがある。
ニトログリセリン112
狭心症の治療に用いる、血管拡張作用を有する硝酸薬。胸部、腰部、上腕部のいずれかに貼布する経皮吸収型製剤が用いられるが、速効性が求められる狭心症発作緩解や急性心不全には、舌下錠あるいは注射剤が用いられる。
尿細管性アシドーシス183
腎臓における尿の酸性化が障害されることにより、代謝性アシドーシスを生じる疾患である。主に3つの型があり、Ⅰ型は遠位尿細管から集合管における酸の排泄障害(水素イオンの排泄障害)、Ⅱ型は近位尿細管における重炭酸イオン (HCO3−)の再吸収障害、Ⅳ型はアルドステロンの欠乏または反応不良が原因と考えられる。アニオンギャップ(血液中の陽イオンと陰イオンの差)が正常なのが特徴である。
尿酸クリアランス190
腎臓における尿酸の排泄効率。痛風や高尿酸血症の指標となる検査項目。クリアランスとは、ある物質が血液から浄化される効率のこと。尿酸クリアランスは、尿酸が腎臓より排泄される速度と、尿酸の血中濃度との比で表される。尿酸は肝臓で合成され、血液中の尿酸の3分の2は腎臓の糸球体で濾過されるが、ほとんどは尿細管で再吸収され、一部が尿中に排泄される。この尿酸量を測定し、時間と体重で割ると1時間当たりに産生された尿酸量が算出され、尿酸合成が亢進しているかどうかが分かる。
尿沈渣180
尿を遠心分離 (500G 、5分) し、沈殿させた成分を尿沈渣という。肉眼では分からない赤血球、白血球、円柱、結晶の有無やその性状などを確認することができる。例えば、尿中赤血球は、膀胱など下位尿路からの場合形は正常だが、糸球体由来の場合は変形が見られ、どこに由来する血尿かある程度推測することができる。採尿後、時間が経過すると尿の性状が変化するため、新鮮な尿を用いる。
尿毒症性物質185
末期腎不全で尿毒症の原因となる毒性物質。健常者では、腎臓の糸球体で血液から濾された老廃物などが、尿によって排泄される。しかし、腎不全患者ではこの糸球体の濾過機能が不完全となり、機能が10%以下となる末期の腎不全では、老廃物などの毒性物質が血中に蓄積することで、尿毒症を引き起こす。この尿毒症の原因となる毒性物質を、尿毒症性物質と呼ぶ。尿毒性物質は、尿素窒素、尿酸、クレアチニンなどのタンパク代謝老廃物、副甲状腺ホルモン、活性酸素などが報告されている。
ノルエピネフリン(Norepinephrine)276
副腎髄質から分泌されるホルモンの一つで、交感神経の活動を高める情報伝達物質。肉体的あるいは精神的に強いストレスを感じたり、感情が高ぶったりした時に、副腎皮質から放出される情報伝達物質。脈拍数や血圧を上昇させて、体を活動に適した状態にする。通常は、状況に合わせて分泌のバランスが取られているが、バランスを崩すことで神経症やパニック障害の原因になると考えられている。ノルアドレナリンとも呼ばれる。
BCR-ABL 融合遺伝子100
慢性骨髄性白血病の原因となるキメラ遺伝子。23対ある染色体のうち、第9番染色体にあるABL1遺伝子が、第22番染色体にあるBCR遺伝子の下流に移動(転座)すると、BCR/ABL1融合遺伝子が形成される。これが産生するBCR/ABL1タンパク質は、がん遺伝子であるABL1のチロシンキナーゼを恒常的に働かすことで、白血病細胞を無秩序に増殖させる。
β(ベータ)遮断薬113
高血圧、狭心症、頻脈性不整脈、心不全などに適用される薬。血圧上昇の要因に心拍出量増加による血管内血液量の増加がある。心臓の機能は、交感神経のβ(β1)受容体が関与しており、このβ受容体を阻害することで心拍、心機能を抑える。その結果、送り出す血液量が減り、血管内血液量も減少するため血圧が低下する。喘息やCOPDではβ(β2)受容体を刺激して気管支拡張するため、これらの患者にβ遮断薬は禁忌。
B細胞105
骨髄(Bone marrow)で分化、成熟した後に血中へ出現する細胞であることから、B細胞と呼ばれる。抗原提示を受けたT 細胞に活性化されて形質(プラズマ)細胞に分化し、抗体を産生することで液性免疫を担う。B細胞表面には5万〜15万分子の免疫グロブリンが存在し、抗原特異的受容体としても働き、抗原を補足した場合にはT細胞へ抗原提示する。
PAM 染色(Periodic acid-methenamine- silver stain):過ヨウ素酸メセナミン 銀染色法282
腎糸球体の病理切片染色を目的に開発された特殊鍍銀染色法。多糖体タンパクの特殊染色法としても広く用いられている。腎蔵にある糸球体の基底膜を染色することを目的に、1953年にJones,D,Bによって開発された、銀を用いた細網線維染色法である。過ヨウ素酸で酸化することで多糖類からアルデヒド基を遊離させ、そのアルデヒド基にメセナミン銀錯塩が結合することで染色される。多糖由来のアルデヒド基が反応するので、糸球体だけでなくメサンギウム細胞、細網血管、さらには細菌、真菌、ウイルスなどの染色にも用いられる。
PAS 陽性物質190
過ヨウ素酸シッフ反応(PAS:periodic acid schiff reaction) 染色では、多糖類が赤紫色に染色されて陽性となる。腎臓の多くの器官が陽性となるため、腎生検標本の全体像をつかむのに適している。PAS染色は、組織切片内のグリコーゲンや粘液多糖類の検出のために考案された方法で、急性リンパ性白血病の一部などの検査に用いられる。また、腎生検の最も一般的な染色法でもある。腎臓の糸球体、尿細管、血管の各基底膜およびメサンギウム基質などは、構成成分に糖タンパクが含まれるため、PAS染色で赤紫色に染色されるPAS陽性となる。これら以外にも、近位尿細管刷子縁、細胞内グリコーゲン顆粒、高度タンパク尿に伴う尿細管細胞内の硝子滴顆粒、さらには粘液性物質、ミトコンドリア、真菌類など、多くの組織がPAS陽性物質である。
pauci-immune 型180
急速進行性腎炎症候群のうち、特発性半月体形成性糸球体腎炎の一つ。1995 年に世界保健機構(WHO)が、「急性または潜行性に発症する血尿、蛋白尿、貧血および急速に進行する腎不全」と定義した腎炎で、急速進行性腎炎(RPGN:rapidly progressive glomerulonephritis)の臨床経過をとる腎炎の総称。予後不良な腎炎である特発性半月体形成性糸球体腎炎もその一つで、pauci- immune型腎炎とGBM型肝炎とに大別される。pauci-immune型腎炎は、糸球体に免疫グロブリンや補体成分の沈着を伴わない腎炎で、70〜90%が抗好中球細胞質抗体(ANCA: antineutrophil cytoplasmic antibody)陰性である。
PCR 法(polymerase chain reaction)104
DNA 増幅酵素と温度勾配を反復させるサーマルサイクラーを用い、標的となる数百〜数千塩基対のDNA断片だけを特異的に迅速かつ容易に増幅する方法。感染症の病原体やがん遺伝子、事件現場の毛髪など、サンプル中に微量にしか存在しないDNAを直接解析することは困難であるが、PCR法を用いて部分的にDNA配列を増幅させることで、遺伝子検出・解析が可能となる。
PE 療法(prolonged exposure therapy): 持続エクスポージャー法270
PTSD(心的外傷後ストレス障害)、恐怖症、不安障害などに用いられる行動療法の一つ。段階的に原因となる心因ストレスにさらすことで、不安などの反応を消去する。
PML-RAR α融合遺伝子102
がん抑制タンパク質の PML(promyelocytic leukemia protein)の遺伝子は、第15番染色体にあり、これに第17番染色体の RAR α(retinoic acid receptor α)遺伝子が融合し、PML-RAR α融合遺伝子が生じる。急性前骨髄球性白血病 (APL) の 90%以上の症例で、PML-RAR α融合遺伝子が検出され、逆にPML-RAR α融合遺伝子が検出されるとAPL と診断される。
肺炎球菌ワクチン139
肺炎を予防するワクチンとして23価肺炎球菌ワクチンが高齢者の定期接種のワクチンとして接種されている。13価肺炎球菌ワクチンは小児にも有効で、髄膜炎の予防効果があ
り、小児の定期接種のワクチンである。
肺胞マクロファージ134
肺胞表面で呼吸によって入ってきた病原体などの異物を貪食する白血球。マクロファージは自然免疫に関与する白血球の一つで、体外から侵入した病原体などの異物を貪食する働きを持っている。肺胞マクロファージの機能が低下すると、病原体の除去が不十分となって呼吸器感染症を起こしやすくなる。
パルスオキシメーター146
指先などに赤色光と赤外光を検出する検出器を装着することで、血液中のヘモグロビンの
酸素飽和度を測定する装置である。同時に脈波を測定するので脈拍数が検出できる。
汎血球191
血球成分である、赤血球、白血球、血小板の3つ全てのこと。血液は、液体成分の血漿と、血球に大別される。血球は、体内で酸素を運搬する赤血球、免疫を司る白血球、止血に働く血小板の3つがあり、これら3つを合わせて汎血球と呼び、全てが減少する疾患を汎血球減少症と呼ぶ。汎血球減少症は、急性白血病や再生不良性貧血などの血液の疾患や、全身性エリテマトーデス (SLE)、結核、アルコール中毒、抗がん剤などの副作用でも起こることがある。
ヒスタミン値250
平滑筋収縮、血管の収縮/弛緩、粘液分泌の亢進などの生理活性作用を持つが、即時型アレルギーの原因、食中毒の原因にもなる。また、ヒスタミンは熱に安定なので、加熱では除去されない。
非ステロイド性抗炎症薬181
解熱鎮痛剤の一種である。アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼを阻害することで、プロスタグランジンの産生を抑制する。プロスタグランジンにはいくつかの種類があり、プロスタグランジン E2は炎症や痛みの原因物質で、これを抑制することで解熱、鎮
痛、抗炎症効果を発揮する。ただし、腎機能障害や胃腸障害などの副作用の可能性があるので、また喘息患者では発作誘発する可能性があり注意が必要である。
フィブリノイド壊死189
血管炎に誘発されたフィブリン様物質が生じる壊死で、悪性高血圧症、悪性腎硬化症や膠原病などで見られる。フィブリノイド(フィブリン様物質)は、変性したコラーゲン、基質、フィブリン(線維素)などに、免疫グロブリンや補体などの血漿成分がにじみ込んで形成される変性物である。類線維素変性、線維素様変性、フィブリン様変性とも呼ばれ、血管炎によって起こる変性。このフィブリノイドが、結合組織に沈着して組織を破壊することを、フィブリノイド壊死と呼ぶ。
フィブリノゲン236
血液凝固因子の一つ。血液凝固の最終段階でフィブリンとなって血栓を作る。網状繊維であるフィブリンは、血球や血小板によってできた血栓の隙間を埋め、血餅・かさぶたを作る。フィブリノゲンの異常値は、この止血過程に異常があることの一つの指標となる。また、感染症や糖尿病など、炎症時に増加するなど、生体防御反応に関与することが知られている。フィブリノーゲンとも呼ばれる。
フィブリン129
出血の際に、傷口をふさいで止血する働きを持つ物質。血液凝固に関連するタンパク質であるフィブリノーゲンが分解して活性化されたもので、二次止血に関与している。出血部位に血小板が集まって血栓を作って止血する一次止血に次いで、多数の血液凝固因子が働いて、最終的にフィブリンを形成する。フィブリンは、カルシウムの作用で血小板が作った血栓に網目状に重なり合って、強固な血栓を作ることで止血する。
フェリチン226
鉄をためておくタンパク質で、肝蔵や脾臓を中心として全身に存在する。体内の鉄分が不足すると、血清中の鉄量よりも先に血清フェリチン値が低下する。鉄分の低下によって鉄欠乏性貧血となるので、血清中の鉄よりも先に低下するフェリチンを測定することで鉄欠乏性貧血を予測が可能である。
フォン・ヴィレブランド因子(VWF: von Willebrand factor)234
損傷を受けた血管内皮細胞下組織と血小板とを接着する血漿タンパク質。止血、血栓形成に重要な役割を担っている。VWFに量的あるいは質的に異常がある場合、出血傾向のある先天性凝固異常症(フォン・ヴィレブランド病)の診断に有用。
ブラ(ブレブ)145
気胸は、肺に穴が開いて肺から空気が漏れ、肺がしぼむことで胸痛、咳、息切れなどを生じる疾患。肺尖部に多い。ブラが破れることで肺に穴が開き、気胸を発症する。ブラができる原因や破れる条件などについて、詳しくは分かっていない。
噴門153
食道と胃の境目の部分。普段は閉じており、食物が食道に入ると反射的に開く。食道の表面細胞は、薄い細胞が重なってできている重層扁平上皮である。一方、胃などの消化管は分泌物が多く、分泌物を貯蔵できる円柱上皮が構成している。噴門は、これら形態の異なる細胞の結合部分である。噴門は下部食道括約筋によって閉じており、胃に入った食物や胃酸が逆流することを防いでいる。また、食物が食道に入ると反射的にこの筋肉を緩めて、胃へ食物を送る。
ヘパリン124
血液の抗凝固剤の一つ。血液凝固に関与するトロンビンの働きを阻害するアンチトロンビンⅢの働きを促進することで、血液が凝固しないようにする。ヘパリンの名称は、最初にイヌの肝臓から発見されたことから、肝臓のギリシア語「hepar」にちなんで付けられた。その後、小腸や肺にも多く存在することが明らかとなっている。血栓塞栓症予防など血液抗凝固剤としての利用だけでなく、人工透析の際にも血液凝固を防ぐ目的で利用される。
ペプチドグリカン253
細菌の細胞壁を構成する、アミノ糖とペプチドの多層構造。人の細胞には存在しない。単細胞生物である細菌は、細胞壁によって、球状、棒(桿)状、らせん状の形態を維持しており、この細胞壁はペプチドグリカン層の厚いタイプと薄いタイプに大別されグラム染色法によって鑑別される。
ベルクロラ音143
胸部聴診の時に、気管や気管支に異常がある場合に聞こえる異常な肺の音。間質性肺炎、気管支炎、喘息など気管や気管支に異常がある場合、胸部聴診を行うとピーピー、ボーボー、バリバリ、プツプツといった異常音が聞こえる場合がある。これは肺胞呼吸音に由来する副雑音によるもので、ラッセル音あるいは略してラ音と呼ばれる。このラッセル音が、ベルクロ社(現Velcro USA Inc.)のマジックテープを剥がす時の音に似ていることから、ベルクロ・ラッセル音、略してベルクロラ音と呼ばれる。ベルクロラ音には、狭くなった気管支を空気が通ることで生じる音(連続性)と、分泌物によって気管支内に生じた気泡の破裂音(断続性)がある。
ベンスジョーンズタンパク(BJP)194
形質細胞が腫瘍性増殖する多発性骨髄腫の患者で見られるタンパク質である。免疫グロブリンの軽鎖が二量体を形成したもので、分子量が約44kDaと小さいため、糸球体から容易にろ過されて尿細管腔に達し、尿中に排泄される。多量のBJPが尿細管腔に到達すると、ヘンレの上行脚で分泌されたTamm-Horsfallムコタンパクと結合して尿細管腔で円柱を形成し、円柱腎症 (cast nephropathy) を生じる。
便培養158
細菌性が疑われた場合などに行われる、糞便を試料とした一般細菌培養同定検査。腸管内には常在菌を含め多種多様な細菌が存在しており、糞便内にも極めて多量の細菌が含まれている。そのため、塗抹による検鏡での同定は困難である。そこで、感染性下痢症が疑われた場合などでは、糞便を試料として、食中毒菌などのターゲットを絞った培養検査が行われる。腸内に常在する細菌の大半は嫌気性菌であり、微好気を含む建機培養によって分離される。
防衛機制283
危険や困難に直面した時や、苦痛や恐怖にさらされた時、これらによる不安などの心因ストレスを減弱するために、無意識的に自己防衛意識が働く心理的メカニズム。抑圧、合理化、同一視、投影・投射、反動形成、逃避、退行、代償、昇華などの反応があり、単独あるいは複数が関連して作用する。心理学者フロイトが最初に提唱した概念で、本能的欲動(イドまたはエス)に対して自我(エゴ)が抵抗するために用いる手段である。
飽和脂肪酸摂取量117
脂肪の構成要素である脂肪酸の一つ。主に動物性脂肪に含まれる脂肪酸で、摂取量が多いと肥満や心筋梗塞が増加し、少ないと脳出血が増加すると報告されている。つまり飽和脂肪酸は、至適摂取範囲が狭い栄養素である。現代の日本人の食生活とこれまでの食文化を勘案し、18歳以上の摂取全エネルギー摂取量に占める飽和脂肪酸摂取量の上限を 7%未満、下限を 4.5%以上と、摂取目標値が定められている。
ホスホマイシン258
細菌に取り込まれた後、細胞壁を構成するペプチドグリカンの生合成を初期段階で阻害する抗生物質。深在性皮膚感染症、膀胱炎、腎盂腎炎、感染性腸炎、ものもらい、中耳炎などに適用される。
マインドフルネス286
心を今に向け、今に集中している心の状態。Jon Kabat-Zinn博士がマインドフルネス瞑想を医療分野に取り入れ、マインドフルネスストレス低減法を開発した。日常の中で絶えず何かを考え、過去に囚われ未来を想像することで、心は揺れ動き、疲弊する。こうした心の疲れを意識的に改善しようとすることが、マインドフルネスである。雑念や無駄な思考を取り除き、心の中心を見つめる手法として、瞑想が用いられる。マインドフルネス瞑想により、呼吸が整うことで交感神経と副交感神経のバランスが整って緊張が緩和し、集中力アップ、ストレス解消、直観力や想像力の向上、質の良い睡眠などの効果があると報告されている。
膜型ホスホリパーゼA2 受容体(PLA2R)178
特発性膜性腎症の責任抗原(標的自己抗原)の一つ。膜性腎症とは、糸球体の周囲に免疫複合体が沈着することで補体が活性化し、糸球体足細胞を傷害してタンパク尿を促す疾患である。日本では、40歳以上のネフローゼ症候群患者の3分の1以上を特発性膜性腎症が占めている。特発性膜性腎症の原因は糸球体足細胞に発現する膜型ホスホリパーゼA2 受容体 (PLA2R) が、自己の免疫細胞から攻撃を受けることで発症するとされている。
マスト細胞239
白血球の一つ、肥満細胞。Ⅰ型アレルギーに関与する。粘膜や結合組織に存在する造血幹細胞由来の細胞で、炎症や生体防御機構に働くだけでなく、花粉症や食物アレルギーなどのⅠ型アレルギーに関与している。マスト細胞の細胞表面には、免疫グロブリン(抗体)のIgE を保持し、このIgEに抗原が結合すると、マスト細胞はヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなどのケミカルメディエーター(化学伝達物質)を放出して生体防御に働く。
末梢血中100
血管の中を流れる血液を末梢血と呼ぶ。血液は酸素だけでなく栄養や老廃物などさまざまな物質を体内で運搬する働きがあり、時として病原体も血液中に混入する場合がある。
ミエロペルオキシダーゼ染色102
急性白血病の分類に用いられる特殊染色の1つ。骨髄像にて骨髄中の白血病細胞(芽球) が20%以上の場合、急性白血病と診断される。さらに未治療骨髄塗抹標において、芽球の 3%以上がミエロペルオキシダーゼ陽性の場合は急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)、3%未満の場合は急性リンパ性白血病(ALL:acute lymphoblastic leukemia)と診断される。
メサンギウム175
腎臓の糸球体を形成する毛細血管を、内側から繋ぎ合わせている特殊な細胞。腎臓には、血液中の老廃物や塩分を濾して尿として排出させる糸球体がある。この糸球体は、毛細血管が毛糸の球のように丸い塊となっていることから糸球体と呼ばれている。メサンギウム細胞は、糸球体の毛細血管を束ねる形で存在しており、細胞外基質とともに糸球体の構造維持に関与するメメサンギウム領域を形成している。メサンギウムの一部は毛細血管の血流と直接触れているので、メサンギウムが炎症を起こすとタンパク尿や血尿が見られる。炎症が広範囲に広がると腎機能が障害され、 IgA腎症などのメサンギウム増殖性糸球体腎炎へと進行する。
免疫グロブリン(Immunoglobulin)106
B細胞が分化した形質細胞によって作られるタンパク質で、抗体とも呼ばれる。病原体などの高分子異物である抗原それぞれに適合して作られ、液性免疫、獲得免疫を担う。生体内の抗体は、血清中に最も多く存在し胎盤を通過するIgG、粘膜で分泌され感染防御を担う IgA、初めて体内に入って来た抗原に対して最初に分泌される分子量の最も大きなIgM、Ⅰ型アレルギーに関与するIgE、まだ機能が明確となっていないIgDの5種類である。
免疫組織化学83
病原体などの生体にとって異物とされる高分子化合物を、抗原と呼ぶ。高等生物では、この抗原に対して、産生した抗体による生体防御機構を有している。抗原と抗体は、鍵と鍵穴に例えられるように、決まった1対でのみ結合する。これを抗原抗体反応という。抗体を標識し、抗原抗体反応を利用することで、抗原物質の体内、病巣における局在やそれを発現する細胞要素を可視化する手法を指す。
モノアミン酸化酵素(MAO)289
神経伝達物質であるモノアミンを不活化する酵素。MAOの機能異常は、精神疾患や神経疾患の原因となる。神経伝達物質である生体アミンは、アセチルコリンとモノアミンに大
別される。モノアミンには、ドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどが含まれる。MAOは、このモノアミンを分解する酵素の一つで、過剰となったモノアミンを消去して神経伝達のバランスを保っている。そのため、このMAOが機能異常を起こしたり過剰に分泌されたりすると、うつ病や統合失調症などの精神疾患や神経疾患の原因となる。
薬剤耐性(AMR:antimicrobial resistance)141
病原体が薬(主に抗生物質)に対して対抗す
る手段を得て、薬が効かなくなること。抗生
物質は、病原体である微生物が増えるのを抑制したり、死滅・破壊する薬である。病原体が薬に感受性を示せば、薬は効果的に働く。しかし、病原体の活動を完全に抑えるには不十分な量の薬を服用し、病原体が生き残ってしまった場合、その病原体は薬に慣れてしまい薬剤耐性能を獲得する可能性がある。
遊離軽鎖194
免疫グロブリンは重鎖と軽鎖が結合している。もともと軽鎖は重鎖と比較して約40%多く産生されており、重鎖と結合できない軽鎖が、遊離軽鎖として細胞外に放出される。軽鎖にはκとλの2種類があり、多発性骨髄腫ではこのκ/λ比に大きな偏りが見られるようになるため、検査で確認する必要がある。
リツキシマブ105
CD20タンパク質を標的とした抗悪性腫瘍剤(抗CD20モノクローナル抗体)。悪性リンパ腫は成熟リンパ球のがんであり、CD20タンパク質はB 細胞性リンパ腫細胞などの細胞表面に多く発現している。抗体製剤であるリツキシマブは、抗原であるCD20タンパク質に結合して細胞を溶解させ、がん細胞の増殖を抑える。CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫、免疫抑制状態下のCD20陽性のB細胞性リンパ増殖性疾患、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、慢性特発性血小板減少性紫斑病などに適用される。
リンパ系99
リンパ管、リンパ節、リンパ組織などから成り、リンパ液の回収、脂質の運搬、生体防御機構(免疫)などの働きに関与している。リンパ管は動脈と静脈に添って体中を走行している。毛細血管間で回収できなかった間質液やタンパク質などの血液の液体成分をリンパ液と呼び、リンパ管はこれらを回収する。また、小腸から吸収した脂質を循環系へと運ぶ。リンパ節、脾臓、胸腺などのリンパ器官は、リンパ組織、白血球などの免疫細胞の産生や情報交換の場として機能している。
レジスタンス運動208
スクワットや腕立て伏せなど、筋肉に負荷をかける動作を繰り返し行う運動。筋肉は、一定の負荷(抵抗:レジスタンス)をかけることで維持あるいは増量する。チューブ、ダンベル、バーベルなどの器具を用いた筋肉トレーニングだけでなく、スクワットや腕立て伏せのように器具を使わない運動も含む。レジスタンス運動は、健康長寿社会形成を目指し、日常生活がより楽に行えるよう、骨粗しょう症や肥満、糖尿病などの慢性疾患予防、改善を目的として、推奨されている。
ロイコトリエン239
脂肪酸代謝によって生じるケミカルメディエーターの一つ。気管支喘息、アレルギーや炎症反応の維持に関与している。脂肪酸代謝によって生じるアラキドン酸から合成される物質の一つで、マスト細胞から放出されるケミカルメディエーター(化学伝達物質)の一つである。好中球の活動を活発にする働きや、気管支収縮作用、血管拡張作用、血管透過性の亢進などに働く。そのため、鼻の粘膜の炎症、鼻づまり、気管支喘息の原因となる物質である。
YAM(Young Adult Mean):若年成人平均値、若年成人比較%216
日本の骨粗しょう症診断において、基準となる若年層の平均骨密度。日本では、YAMを 100%とした時の被験者の骨密度の割合(%)を骨粗しょう症診断基準としている。YAMの80%以上であれば正常、70〜80%では骨減少症、70%未満で骨粗しょう症と診断される。