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へるすけあこらむヘルスケアコラム

地球温暖化と感染症

2021.11.18

地球環境の変化で新たな感染症に見舞われる危機にある!?

数ある地球環境問題の中で、最も知名度が高いのは地球温暖化問題ではないでしょうか。

農業革命、産業革命と、人類は文明を発展させることで、爆発的に人口を増やし、世界人口は今後も増えると予測されています。

人口が増えれば生きるために電気やガスなどのエネルギーが必要となり、これらを得るために化石燃料を燃やすことで温室効果ガスの放出も多くなり、結果として地球温暖化が進みます。

地球温暖化はそれだけが問題なのではなく、エネルギー問題、人口増加やそれに関わる食糧不足など、多くの環境問題に関与しています。また、地球温暖化は直接あるいは間接的に私たちの健康にも関与してます。

今回は特に注目されている感染症との関係を考えてみましょう。

 

地球温暖化と未知の感染症

地球の気温は、太陽から届く日射エネルギーによる加熱と、地球から宇宙へ向けて放出される熱放射エネルギー(赤外線)とのバランスで決定されていますが、この熱放射エネルギーを吸収して地表面の温度を高めているのが、二酸化炭素に代表される大気中の温室効果ガスです。

 

もしも地表に大気が存在しなければ、平均気温マイナス18℃の極寒世界ですが、温室効果ガスを含む大気があることで15℃程度に保っています。ところが近年、世界的な人口増加とエネルギー消費によって大気中の温室効果ガスが増加し、地表の平均気温が上昇しています。

 

再生可能エネルギー、カーボンオフセットや人工光合成などの対策も講じられつつありますが、これまでの負の蓄積から依然として地球温暖化が進んでいます。

地球温暖化による気温上昇によって、私たちの生活空間が暑くなるだけではなく、熱中症といった健康被害が起こりやすくなります。

また、温暖化の影響は直接的な暑さだけでなく、極圏の氷河融解による海面上昇(陸地が狭くなる)、ゲリラ豪雨のような気候変動との関係も注目されており、生物・生態系への影響や、農林畜産業への影響も危惧されています。

こうした影響は、回り回って私たちに対しても健康影響を及ぼします。その一つに、感染症があります。感染症とは、病原体である微生物がもともと生育していた場所や生物から、感染先の生物(宿主)へと移動して暮らし始め、そこで増殖したり毒素を出したりすることによって、宿主を病気や死に至らしめることです。

 

病原体には、細胞構造を持つ細菌、真菌、原虫、蠕虫と、細胞構造を持たないウイルス、プリオンなどがあります。私たちはこれまでにも、感染症の苦しみを多数経験していますが、温暖化が進むことで今まで日本では経験しなかった病原体が外国から入ってきたり、未知の感染症が発生する可能性があるのです。

 

生態系の変化が感染症を拡大する

海外で病原体に感染し、日本に帰国・入国してから発症する感染症を、輸入感染症と呼びます。

COVID-19が発生する直前1週間のデータを見てみると、細菌性赤痢、アメーバ赤痢、腸管出血性大腸菌症、腸チフス、デング熱、日本紅斑熱、HIV、風疹、マラリアなどが、輸入感染症として報告されています。この中の、デング熱とマラリアは蚊が媒介する感染症で、デング熱は2014年に70年ぶりとなる国内での感染事例が発生し、代々木公園の閉鎖やボウフラ駆除など、大きな騒ぎとなりました。

 

デング熱を国内で媒介した蚊はヒトスジシマカですが、海外ではネッタイシマカなどが媒介します。ネッタイシマカは、ヒトスジシマカと比べて吸血性の高い蚊なので、感染を広げやすい蚊といえます。またネッタイシマカは、デング熱だけでなくジカ熱やチクングニア熱など多くの病原体をも媒介する蚊として知られています。

名前からして熱帯地域に生息することの分かるネッタイシマカですが、現在の日本には生息していません。日本は四季に恵まれた国なので、10℃を下回ると卵や幼虫が死んでしまうネッタイシマカは、越冬ができないのです。

しかし、地球温暖化が進んで、日本国内に冬場でも10℃を下回らない地域ができてくると、彼らは生息域を広げようと北上してくることでしょう。10℃以下では越冬できないとはいえ、ネッタイシマカは屋内を好む蚊でもあるため、一度国内で繁殖すると瞬く間に日本全土へと広がり、同時にこれまで輸入感染症がほとんどであったこれらの感染症の国内流行が起こる危険性があるのです。

これは、地球温暖化による生態系の変化が、日本国内で発生する感染症に影響すると考えられる代表的な例でしかありません。

 

地球温暖化対策で感染症予防を

地球温暖化の感染症への影響は、気温上昇による生態系や病原体の生息域変化だけではありません。

気温の上昇は、水不足や水温上昇による水質変化も引き起こします。さらに、この水を利用した農林畜水産業では、気温上昇と相乗して生育・生産が不十分となる可能性が出てきます。

 

沿岸漁業でも、収穫が落ちるかもしれません。国内だけでなく、地球温暖化が進むと世界人口が増える一方で食料が不足します。水や食料が不足すると、奪い合いが起こるだけでなく、水不足による衛生状態の悪化と栄養不足による免疫低下が一度に襲ってきます。そう、病原微生物が猛威を振るいやすい環境になってしまう可能性が高いのです。

さらに、食材や住居確保による人間の新たな開拓や、逆に食べ物を求めて野生動物が都市部に出没するなどすると、新たな感染症に見舞われる可能性もあります。

 

感染症予防の視点で考えても、地球温暖化対策は私たちの健康維持のために必須なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●プロフィール

内藤博敬

静岡県立農林環境専門職大学 生産環境経営学部 准教授

日本医療・環境オゾン学会 副会長

日本機能水学会 理事

専門は衛生学、病原微生物学、免疫学、生化学。

ウイルスや細菌の感染予防対策法とその効果について、幅広く研究を行っている。

 

 

 

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