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へるすけあこらむヘルスケアコラム

【福祉】地域住民などから求められる医療ソーシャルワーカー(MSW)の役割

2022.10.25

まだ続くコロナ禍のソーシャルワーカー、患者家族の苦悩

コロナ禍のソーシャルワーク業務は、いまだにストレスの多い状態が続いています。特に入院患者さんの家族は、感染対策のために面会することができず、現在の患者さんの状態を把握することが難しい状況です。MSWは、家族に電話でリハビリや入院生活の様子を小まめに伝えたり、家族が洗濯物や差し入れを持ってきてくれた際に、患者さんのリハビリの様子を撮影した動画をiPadで見てもらったりと試行錯誤しています。それでも、退院時にご家族から「こんなに動けないとは思わなかった」、「認知症がこんなに進んでいるとは聞いていなかった」など、家族がイメージしていた患者像とは異なるということが起きてしまいます。

最近ではご家族から「こんなご時世で会えないから仕方ないですよ」と理解を示してくれることも増えました。いまだ面会ができない感染下で、どのようにしたら的確に家族に患者さんの様子を伝えられるか、齟齬(そご)を減らせるか、といった課題を抱えたままのように感じています。

 

 

新型コロナ感染症が引き起こす社会問題

さて、医療現場では前述のような課題に加え、新たに二つの問題を抱えています。一つは社会的な問題を抱えた患者さんや家族が増加していることです。例えば児童虐待や自殺者、失業者の増加がニュースでも報道されていますが、それを体感できるくらい支援の依頼件数が増えています。

飲食店に勤務しているAさんの場合は、コロナの影響で仕事ができず、家にいる時間が増え、昼間から飲酒するようになり、配偶者や子供に手を挙げてしまうようになりました。また、地方から出てきた学生のBさんの場合は、休校が続き、アルバイトもできず、家賃の支払いが苦しくなりますが、身近に支えてくれる知り合いもおらず、精神的に病んでしまいました。そして、路上で警察に保護をされてしまいました。

コロナは、経済活動を妨げたり、それまで当たり前だった日常生活を一変させたりする原因の一つとして取り上げられることもありますが、身近なところにコロナ禍で苦しんでいる人を目の当たりにして、コロナの悲惨さを思い知らされています。

MSWは普段からどこにどのようなニーズがあるのか? というアンテナを張って、児童相談所や地域包括支援センターなどの福祉関係機関に最近の地域の様子を聞いたり、お互いに相談内容に変化がないかなど情報収集をしたりしています。その一方で、病院ではどんなことが起きているか? ということに関心の高い関係機関も多くあります。そこでお互いに情報共有を進めて、協力関係を高めています。そして市民生活を一変させてしまうような環境変化が生じたときには、地域住民が病院やMSWにどのような支援を求めているのか、また、MSWはどのように立ち回れば良いのか、などのアドバイスをいただくことができます。そして、こうした地域のニーズをMSWは病院にフィードバックをしています。

 

 

コロナは後任者の育成にも影響!?

もう一つの問題は、コロナ感染下では医療従事者を目指す多くの学生の実習機会が減っていることです。感染拡大を防ぐためとはいえ、MSWを目指す学生が医療現場での実習ができず、MSWを志す学生が減ってしまったのではないかと危惧しています。これはMSWだけに限らず、看護師など医療従事者全般に言えることかもしれません。

最近は社会福祉士を取得した(新卒の場合は社会福祉士受験資格)MSWの求人が増えています。これは、診療報酬において、社会福祉士の配置によって取れる加算が増えてきたことが挙げられます。社会福祉士の資格を取得するためには、地域包括支援センターや福祉事務所、児童養護施設などの実習施設で学ぶことになりますが、生活保護法、介護保険法、障害者総合支援法などの福祉系の施設実習施設が多く、いわゆる医療現場となる実習先は病院のみになります。MSWを目指す学生が病院で実習できなかった場合、それでもMSWになりたいと志を維持できるだろうか、という不安があります。日本医療ソーシャルワーカー協会の求人情報を見てみると、多くの医療機関がMSWの求人情報を載せています。最近では、特に診療所の求人も目立つようになりました。

MSWは日ごろから地域との連携を意識して業務に就いているので、コロナ禍であっても十分な連携が図れるのではないか? と思っていますが、まだまだ不十分なようです。ただ、病院も地域包括支援センター等の地域の関係機関も、地域住民の生活や健康のため、介護負担の軽減のため、それぞれの立場から協力し合っていることは理解しています。他の地域のMSWの取り組みなども参考にしながら、患者さん、家族、地域住民のために努力していかなければいけません。

これからも医療機関で社会福祉の立場から患者さんや家族を支援する立場にあるMSWの役割はますます拡大していくと思います。MSWを目指す学生、転職でMSWになろうという仲間が増えていくことを願っています。

 

  • プロフィール

柏倉剛彦

聖カタリナ病院相談支援室

医療ソーシャルワーカー社会福祉士

 

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