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へるすけあこらむヘルスケアコラム

面談の重要性とツールの活用~コロナ後の面談のあり方~

2022.02.14

コロナ前と後のソーシャルワーク業務

これまでソーシャルワークの相談支援では、クライアント(対象者)との面談や他職種とのカンファレンスなど“対面”を重視してきました。クライアントの理解のためには、発する言葉(言語)や内容を把握するだけでなく、表情や身振り手振り(非言語)、言葉遣いや声のボリュームなど(準言語)を観察する必要があります。また、問題の解決にむけてクライアントに何を聞いたら良いか、どのようなコミュニケーションを図ったら信頼関係が築けるか、そのヒントも面談にあるため、やはり対面による面談は必要な機会でした。

しかし、コロナ禍の感染対策として対面による面談が制限されてしまいました。そのことにより相談支援の質が落ちるのではないかと不安にもなりました。いつまで続くか分からないコロナ禍において、このまま対面による面談にこだわるわけにいきません。一般的にテレワークやWeb会議が普及してきたことに伴い、これまでIT化が遅れていた医療や福祉の業界においてもZoomやTeamsなどの使用機会が増えてきました。これは大きな変化と言えます。コロナ後のソーシャルワーク業務を見据え、対面の面談をこれまで同様に大切にしつつ、必要に応じて手段を使い分けることが求められていると思います。

 

メディカルソーシャルワーカーの役割

私が医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)として働き始めて20年が経とうとしていますが、コロナ禍という異常事態の中での業務は、これまで経験したことのない過酷なものでした。

本来のMSWの業務は、患者が安心して入院生活を送れるように医療費や介護保険制度などの社会資源の相談に応じることや退院後の在宅生活がスムーズに行われるように患者や家族と相談し、地域関係機関(訪問診療、訪問看護、ケアマネジャー、民生委員等)と連携して支援することが主な業務です。

特にMSWが大切にしていることは、患者や家族との“面談”です。しかし、高齢者が病気やケガをすると身体機能が低下したり、入院が長引いたりすることで認知症が進行するなど、患者の身体的な問題がおこることがあります。また、高齢者の単身、夫婦のみの世帯が増加していることで、家族の介護者不足や老々介護の問題もあります。さらに、自宅内に階段や段差があったり、居住スペースに介護ベッドが置けなかったりなど、日本の狭い住宅事情も大きな問題となることがあります。

このような様々な問題がある中で、患者本人や家族から、今後の生活をどこで、どのように送りたいのか、という意思をしっかりと聞き、その意思を実現できるように支援することがMSWの大事な役割です。

しかし、新型コロナ感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大に伴い外出制限がされるなど、入院中の患者といえども、MSWはこれまでのように面談することが難しく、マスクやゴーグルの着用、場合によってはアクリル板で隔てられ、さらには面談の時間を15分以内にするなど、感染対策を行った上で業務をすることになりました。しかしながら、高齢患者は目が不自由だったり、難聴だったりする方も多く、なかなか会話が成り立たず、歯がゆい思いをして面談をしていました。

 

コロナ禍で浮き彫りになった現状と課題

コロナ禍でとても苦労したのは、面会制限のために、家族が患者の様子を見に来ることができなくなり、患者の状態を把握しづらくなったことです。家族に患者の状態を伝えるために、医師や看護師、リハビリ担当者、MSWなど様々な職種の担当者から、家族に電話で伝えるのですが、家族は様々な職種の担当者から連絡を受けることになり混乱することがありました。また、担当者の説明(表現)が、少し違うだけで、家族の受け止め方が変わり、退院の時に“こんなに歩けないとは思っていなかった”“こんなに認知症が進んでいるんだったら家には連れて帰れません”など、家族がイメージしていた状態と異なり、スムーズな退院に繋がらなかったこともありました。

家族が面会に来られないことの弊害は、大きなものでした。それを解決するために徐々に病院がオンラインでの面会などを取り入れ、患者と顔を合わせて会話ができる機会を設けたり、リハビリや食事の様子を動画で撮影したり、家族にそれを見せながら今の状態を説明するなどの取り組みを行う病院が増えてきました。患者に会えなくても、動画で状態を説明するために、家族に来院していただくことは、申し訳ない気持ちもありましたが、コロナ禍という異常事態を理解してくださる家族がほとんどでした。「大変でしょうけど、頑張って下さいね」といった励ましの声をかけてくださる家族もいました。医療従事者も疲弊している人が多い時期でしたので、患者や家族の感謝の言葉がとても心に響きました。

 

今後のMSWの在り方

最近では、退院前のカンファレンスを行う際、地域関係機関がZoomなどのビデオ通話で参加することが増えてきました。研修や学会などのイベントもオンラインで行われることがほとんどです。これまで医療業界ではICT(情報通信技術)の導入は他業種と比較して、出遅れていた印象ですが、新型コロナを機会に急速に発展してきており、通常業務のインフラとして普及してきているように思います。オンライン診療を行う医療機関も増えてきました。

MSWの業務は患者や家族と”面談“して問題を解決することを大切にしているので、コロナ禍で”面談“ができないことは業務の手段を封じられてしまったことに等しい状態でした。MSWとして20年従事していますが、面談をしないで業務を行うことは想像さえしていませんでした。しかし、ICTの活用である程度の問題は解決できたと思います。徐々に感染が縮小し、平常通りに家族が面会に来られる日はそう遠くないと思っています。対面による”面談“の大切さとICTの利便性を上手に使い分けて業務を行うことができれば、コロナ禍以前よりも発展したソーシャルワーク業務ができるのではないかと期待しています。

 

 

 

 

 

 

●プロフィール

柏倉剛彦

聖路加国際病院 医療社会事業部
医療ソーシャルワーカー
社会福祉士

 

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