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へるすけあこらむヘルスケアコラム

【医薬品】社会問題化するオーバードーズの実態と対策

2026.09.29

薬剤師免許取得者である私は、最近、身近な知人や友人からドラッグストアに関する次のような質問を受けることが増えています。

「風邪薬コーナーのレイアウト位置が変わってしまっていて、買いたい薬を見つけにくかった」

「いつもの咳止め薬が、レジ下のガラス棚に入ってしまい、手に取ってじっくり見られなくなってしまった」

「薬剤師さんに『この薬は18歳未満の子どもには1箱しか販売できない』と言われて、戸惑った」

「レジで店員さんに年齢や他のお店での購入状況などを質問されたのは、なぜ?」

読者のみなさんも同じような経験はありませんか?

 

こうした変化の背景にあるのは、2026年5月1日から改正薬機法に基づいた「指定濫用防止医薬品」の新しい販売ルールです。そのお店だけでなく、すべてのドラッグストアや薬局でこのような販売方法を義務付けられたのです。

そこで、今回は、ドラッグストアや薬局で販売されている市販薬(OTC医薬品)、特に「指定濫用防止医薬品」をめぐる販売ルートの変更とその背景にあるオーバードーズ対策について解説します。

 

840品目以上が「指定濫用防止医薬品」に該当

これまでも「濫用等のおそれのある医薬品」として指定された医薬品については、販売時の確認などがすでに実施されていましたが、2025年の薬機法の一部改正では、新たに「指定濫用防止医薬品」として規定されることになりました。対象となるのは、8つの指定成分を含む医薬品で、840品目以上が該当します。

咳止め薬や風邪薬の多くがこれに該当しますが、特別なマークなどの表示がないので、購入時には判別できないかもしれません。「指定濫用防止医薬品」については、製品に添付されている文書(添付文書)の使用上の注意にある「してはいけないこと」の部分や外箱の「注意」のところに、「過量服用しないで下さい」と追記する、あるいは外箱の底面などのバーコード部分に「要確認」、または「要」と丸または四角囲みして記載することになりました。経過措置が1年あるので、すべての店頭の商品には対応できていないかもしれません。店舗によっては、製品ラベルの横に「指定濫用防止医薬品ですので、お一人様1個まで」などのPOPを付けて陳列棚に並べているところもあるようです。気になる場合は製品サイトなどで確認するとよいでしょう。

 

市販薬の乱用経験は中学生で1.8%、高校生で1.4%

医薬品を決められた用量を守らずに大量にたくさん飲んでしまうことを、オーバードーズ(Overdose:OD)といいます。特に最近は、風邪薬や咳止め薬などをそれらの症状を抑えるためではなく、感覚や気持ちを変化させるために大量に服用する若者が増えていて、その低年齢化も深刻になっています。

これらの薬にはごく少量ですが、精神を高揚させる成分などが含まれており、大量に摂取することで一時的に開放感や安心感が得られます。たとえ市販薬であっても、過剰に摂取すれば昏睡やけいれん、発作など身体に重大な影響を及ぼして、最悪の場合死に至る恐れがあります。

 

市販薬のオーバードーズは、コロナ禍以降に急増しています。家庭や友人関係で生きづらさを抱えて孤立や不安がある若者がSNSで情報に接し、現実逃避のために手を出してしまうケースも多いようです。厚生労働省研究班の2024年度の調査では、過去1年に市販薬を乱用した経験がある中学生は1.8%、高校生は1.4%と推計されました。このようにオーバードーズが社会問題化している現状を踏まえ、該当する市販薬の販売規制が強化されました。

 

販売規制だけでなく、丁寧な対応が求められる

「指定濫用防止医薬品」の販売については、適正に使用していただくために医薬品の区分に応じて薬剤師あるいは登録販売者が購入者に必要事項の確認および情報提供を行って、販売の可否を判断することになります。

以下に規定された販売ルールをまとめてみます。

①一人当たりの販売数量の制限

購入できる数量は、一人一包装単位が基本です。18歳未満は大容量サイズや複数個の購入はできません。

②購入者への確認・情報提供

18歳未満および必要な場合には、薬剤師や登録販売者が購入者の氏名・年齢(身分証の提示)、他店での購入状況、購入理由を確認します。18歳以上であっても、大容量または複数個購入の場合の理由を確認して、適切でない場合は販売を控えることになります。

③店頭の陳列方法

指定濫用防止医薬品は、購入者が自由に手に取ることができないように、鍵付きのガラスケースやカウンター越し、または薬剤師・登録販売者から7m以内の常時配置エリアのいずれに陳列されます。

④販売記録の管理

薬局やドラッグストアでは、各店舗が販売手順書を整備し、購入者記録を管理・運用します。

 

購入者は「具合が良くないから薬を買いに来たのに、いろいろ質問されすぐに購入できない……」と戸惑うことも少なくないかもしれません。市販薬の乱用防止のためには、薬剤師や登録販売者はゲートキーパーの役割を期待されています。それは、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、“見守る存在”を意味します。購入者と会話をし、もし悩みを抱えていたり、乱用が疑われたりする場合は「必要に応じて専門機関への相談を促す」「相談先が記載されているリーフレットを渡す」などの対応をします。

購入者からすると「何か疑われているのか?」「薬が買いにくい」などと思うこともあるかもしれませんが、命を守るための大切なコミュニケーションと捉えて、購入目的や状況を素直に回答するようにしてください。

ただし、当該医薬品の大量販売の拒否や購入者履歴の管理だけでは、リスクを完全に防ぐことはできません。若者が乱用に至る背景には、家族や友人関係、学校生活の悩みなど、日常生活における不安や孤立などの根本的な原因があるため、販売規制での対応に留まらず、メンタルヘルスを含めた社会全体での包括的な支援が急務となっています。市販薬の乱用に悩む本人だけでなく、それに気づいた家族や友人の方なども含め、地域には、精神保健福祉センターや依存症相談拠点機関などの相談できる専門機関があります。

そして、薬剤師や登録販売者は薬局・ドラッグストアの店頭に立つだけでなく、ゲートキーパーとしての役割を果たし、必要に応じて相談窓口へ適切につなぐことでなど、地域全体で孤立した若者たちを支えています。もし、自分や家族、友人などが市販薬の乱用で悩んでいるようでしたら、身近にあるドラッグストアの薬剤師・登録販売者に相談してみてください。

 

市販薬は、風邪をひいたときなど、軽度な身体の不調の時には頼りになる薬ですが、決められた目的や用法・用量を守らないと、心身に悪影響を及ぼします。薬剤師や登録販売者からの説明に従って、説明書を必ずよく読み、使用方法や使用量を守って正しく使うようにしましょう。

 

■参考

・医薬品を安全に使うために/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/20.html

・一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について (薬剤師、登録販売者の方へ)/厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/index_00033.html

 

 

■筆者プロフィール

伊與 博美

株式会社 読売広告社、薬剤師

薬事関連業務を基盤としながら、研究・開発などのモノづくりから、プランニング、ライティング、プロモーション、PR、Webサイト制作やWebプロモーションまで、広告業でのあらゆるプロセスにおいてクライアントニーズに対応している。

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